主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

真のうわばみとは呑んでも呑んでも顔色が変わらず、呂律が回ることなく、よろけたりすることもない。
弟妹は皆、それだった。

最初は朧が居なくて寂しいな、と思っていたがーーそうも言っていられなくなった。

まず輝夜が皆に引き止められて居残ったことで気分が高まり、滅多に帰ってくることのない次兄を羨望の眼差しで見つめる。


「輝兄、次はどちらに?」


「そうですね…ここからはかなり離れている場所ですよ」


輝夜の力は全容を明らかにしていないため、そう言われると相槌位しか打てない。

割りと早い段階で家を出たため、下の方の弟妹たちは数えるほどしか会ったことがなく、所作も顔立ちも中性的な輝夜に見惚れていた。


「輝夜が来てくれなかったら朧は死んでたかもしれないんだ。ほんと命の恩人だな」


「あんなにはっきりと声が聞こえては無視などできませんから」


輝夜と雪男が並んで座り、膝がつきそうな距離で弟妹たちが座っていたため熱気がひどく、雪男は手で顔を仰ぎながら席を立った。


「お前ら暑苦しいんだよ。毎日こんなんだと溶けちまう」


「だってあなたと朧が夫婦だなんて…異論はないですが意外すぎてね。幼い頃は母様似でしたが今は父様似ですし」


「お、おいおい…朧の前で息吹の話はするなよ。今でも根に持たれてるんだ…」


苦笑した雪男だったが、彼らは雪男が息吹に惚れていて実らない恋を捨てられずにいたのを間近で見ていた。

息吹は十六夜に一筋で、また逆も然り。

そんな雪男のひたむきな想いを変えたのが末妹だというのが未だに信じられなかったが、先程素手で手に触れているのを見て心から嬉しく思っていた。


「よく父様に殺されずに済みましたね」


「いや、殺されかけたんだぞ!死ぬかと思った…」


「いやいや父様はもう諦めていましたよ。どうせ嫁に出すならあなたの元にと思っていましたし。…おっと口が滑りました」


輝夜が盛大に口を滑らしたおかげで十六夜の真意を知った雪男は、無性に十六夜に会いたくなってそわそわ。


「俺ちょっと…」


「ええどうぞ行ってらっしゃい」


弟妹たちが残念そうな声を上げたが、雪男は屋敷を出て誰1人歩いていない道を行く。


きっとまだ起きているはず。

朧に会いに行くのではなくちゃんと礼を言うために。