主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「わああっ、みんな揃ってる!」


庭を散策したり居間で談笑している息子や娘を見て嬉々として声を上げた息吹は、母を見るなり脱兎の如く駆け寄って来た皆に笑顔を向けた。


「母様!」


「母様!!」


…皆が年甲斐もなく母親にでれでれで、きらきらした目で一心に見つめられた息吹は、末娘の朧の手を何故かがっしり掴んだ。


「みんなと会えて嬉しい!」


「母様もお変わりなく何よりです」


「うん、父様もとっても元気だよ。あのね雪ちゃん」


「んっ?」


急に声をかけられた雪男はその時やっと兄弟たちから解放されて胸を撫で下ろしていたのだがーー


息吹はぽかんとしている朧の手をさらに握りしめて有無を言わさぬ明るい口調で雪男を凍りつかせた。


「朧ちゃんは祝言の日までうちで預かるね」


「へっ?な、なんで…」


「女には色々準備しなきゃいけないことがあるんです。お嫁に行ったら頻繁に帰って来れなくなるし、父様が悲しそうにしてるから親子水入らずの時間を下さいな」


そう言われると反論できず、如月の件もあって雪男と離れたくない朧が口を開きかけたが、朔が頷いたので口が閉じてしまった。


「分かりました。こちらはこちらで色々と準備を進めておきます」


「朔ちゃんお願いね。若葉も手伝ってね」


「はい」


縁側で牢から解放された焔と共に居た若葉が尻尾を振って答える。


如月の目が嬉しそうに光ったのを見逃さなかった息吹は、今度は如月の手をぎゅうっと握ってにっこり微笑んだ。


「如ちゃんは私と一緒に準備!」


「ええっ?母様、私はここで…」


「駄目だよ雪ちゃんにちょっかい出しちゃ。朔ちゃん借りてくね」


「どうぞどうぞ」


朧と如月が後ろ髪引かれる思いで息吹に連れ去られると、もっと息吹と一緒に居たがった子供たち…いや、大人たちががっかりして肩を落とす。


「雪男、新居を見に行こう」


「おう」


「私も」


「俺も」


弟妹たちがわらわらとついて来る。

大所帯の十六夜一家の集結はとても懐かしく、あたたかいものに包まれている気分になりながら、丘を上った。