主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

さすがに兄弟全員が揃うと居間は窮屈だったため、あまり使用することがない大広間に移動して上座に座った朔が先手を打った。


「話すことは沢山あるだろうが、まずこれだけは言っておく。俺に嫁はまだかとか、女を紹介するだのそういう話はするな」


ーー見目麗しい長兄が独り身…

輝夜より下の者は皆所帯を持ち、本来妻を何人も娶っていいはずの朔が独り身なのは問題といえば問題。

会ったらすぐ兄に釣り合う女を紹介しようと思っていた弟妹たちが一斉に口をつぐむ。


「大丈夫ですよ、兄さんは素敵な方と巡り合いますから」


輝夜の予言に一同がほっとした顔をした。

それがいつかは分からないがとりあえず朔が独り身のまま一生を終えるわけではないとわかり、次に矛先が雪男に向かった。


「しかし兄様…まさか雪男と朧が夫婦とは想像だにできませんでしたが」


「そうか?俺はいつかは俺の身内から嫁がせたいと思っていたぞ」


「ははは、兄様は小さな頃から雪男贔屓でしたからね。いつも雪男の後をくっついて離れず、一緒に寝ることもしばしばだったのを思い出します」


歳の近い三男からの思わぬ暴露に朔はやや顔を赤くして手で口元を覆うと首をひねる。


「そうだったか…?」


大広間に笑い声が響く。

朔のすぐ傍に座っていた雪男は、彼らから反対の声が上がらないことにほっとして隣の朧と顔を見合わせて笑った。


「とりあえず…俺たちのことは許してもらえたのかな?」


「反対などしないさ。我らはあなたから全てを教わったのだから」


胸が熱くなり、黙り込んでしまった雪男の手を朧が包み込む。


決して素手で雪男に触れてはいけないと息吹から言い聞かされていた彼らはそれを目にして目尻を下げた。


「反対する者は居ないな?まあ居たとしても俺が説得したが」


「如月姉様は?」


一番後ろに寝転んでいた如月が雪男に執着していたのを年長たちは知っていたため気にはしていたがーー如月は手を振って笑った。


「賛成だよ。だが私の玩具に変わりはないからそこは朧にも認めてもらわないとねえ」


相変わらずな如月に朔と輝夜が肩をすくめて笑った。


「祝言まで日がない。お前たちにも色々と手伝ってもらうぞ」


はい、と一斉に声が上がった。