主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

その後氷麗とひとしきり談笑してから外に出て待っていた猫又に雪男が先に乗り、朧がひょいと抱えられて横向きに乗った。

ーー周囲には女が目立つ。
しかも泣いている者まで居て、むっとなった朧は雪男の胸を強めに叩いた。


「いてっ。どうした?」


「泣いてる女の方が沢山居ますけど。この中の何人に手を出したんですか?」


「えっ?あー…まあ…何人か居るけどそんなに多くは…いててっ」


女遊びしていたのは過去だと頭では分かっているが納得し難く、膨れっ面の朧の頰を指で突いて破裂させると、雪男は皆に手を振って猫又に合図して空を駆けた。


「怒んなって。な?」


「…私がすごく男遊びしてたらどう思います?」


「え…っ。……嫌だ。めっちゃ嫌だ」


「ですよね?じゃあ私の気持ち分かってもらえますよね?」


「すいませんでした」


息をついて抱きついた朧は、快調に飛ばす猫又の毛を撫でながら雪男に風から守ってもらう。

もう昼を過ぎていた。

夕方までに間に合うかと心配したが、幽玄町の屋敷には朔たちが百鬼夜行の準備を進めていた頃に着いた。


ーーそんな中、少し変わったものに気付いていた雪男は庭に降りるとまず朔に挨拶をしに行った。


「戻ったか」


「おかげさまで母さんと仲直りもできたし、主さまありがとう」


「それは良かったな」


「ところで…上から妙なものが見えたんだけど」


ああ、と呟いた朔が屋敷の裏庭に広がる山々を見上げた。

少し上がった所にはかつて銀と若葉が暮らしていた家があったが今は平地になっていたはずだったがーーそこに材木や人が居るのが見えていた。


「お前たちが暮らす家を建てさせている。少し時間はかかるが、そこに住めばいい」


ーーまさか家まで準備してもらえるとは思っていなかった雪男が唖然とすると、朧が朔に抱きついて喜びを爆発させた。


「兄様!ありがとう!」


「うん、ここだとふたりで落ち着いて過ごせないと思ってね。これから家族も増えるだろうし」


「主さま、何から何まで…」


「お前はもう俺の身内だ。何か欲しいものや足りないものがあったら言え」


輝夜が傍でにっこり微笑む。


身内になるーーじわじわと実感が湧いてきた。