主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「もうっ!お師匠様の馬鹿!どうしてお母様の前で…」


「や、なんか可愛い顔してたからつい」


朧の頭にまた羽織を被せてあまり顔が見えないようにした雪男は、絶句して睨んでくる朧の手を取って立たせた。


「は、恥ずかしいじゃないですか…」


「母さんにはあれ位見せつけとかないと納得しないだろうし。なあ、あんま時間ないけど俺が生まれて育ったここを案内したいんだけど」


「!行きますっ。でもなんで頭に羽織を?」


「じろじろ見られてお前が減ったら困るから」


にっこり笑ってのたまう雪男に返す言葉がなく、屋敷を出ると、雪男の友人や親戚連中が集まっていた。


皆の関心はやはり朧で、あまり見えない顔を覗き込もうと躍起になっていたが、雪男が絶妙に庇って分からないようにしていた。

…が、美人であることは隠しようがない。

時折目を上げて皆を窺っている朧に男の友人たちは鼻の下を伸ばし、それが気に入らない雪男は朧を抱き上げて最後に皆に声をかけた。


「俺の嫁さん可愛いだろ?お前たちも早く嫁さん貰えよ」


すぐさま皆が批難の声を上げたが、皆が雪男と再会できたことを喜んでいた。

何せ妖を統べる主さまの側近として名を上げ、先程嫁になるのはその主さまの妹だと聞いてそれを喜ばしく思い、雪男が同族から選ばなかったのは少しだけ残念に思っていたが、あんなに嬉しそうにしていたのははじめて見た。


「お師匠様、皆とゆっくり話さなくていいんですか?」


「んん、まあ子でもできたら顔見せに戻ればいいし」


ーー子。

顔が赤くなった朧と目が合った雪男は、朧の耳元でこそりと囁いた。


「あんなにしてたらすぐできるかもな」


「…!助平!」


「ははっ、まだまだ足りない。まだまだ頑張って下さい!」



一面真っ白な雪に覆われた道をふたりで歩く。

氷麗に受け入られ、雪男の友人たちから祝福され、ここに来て良かったと思った。