翌朝起きると、身体に絡まっている雪男の腕を解いて化粧台の前に座った。
巾着から白粉と紅を出して丁寧に化粧をした。
…ある意味戦いになる。
こうして姿だけでも武装して気合いを入れないと、氷麗の冷たい言葉に心が凍てついてしまう。
「んん……早いな…おはよ」
「おはようございます。早く準備して行きましょう。でないと夜までに間に合わないかも」
化粧をすると幼さが消えて女の顔になる朧を背中から抱きしめた雪男は、緊張して強張っている朧の頭を何度も撫でて振り向いた朧の唇を奪った。
「もうっ!紅が取れちゃう」
「そんなんしなくても綺麗だって。俺がついてるから心配するな。飯食ってからすぐ出よう」
着替えた後朝餉を食べて外に出ると、猫又が欠伸をしながら朝陽を浴びてごろごろ転がっていた。
「猫ちゃんお待たせ。行こっか」
集落の入り口まで歩いて行くと喉を鳴らす猫又に乗り、一路最北に位置する故郷の集落を目指す。
途中ちらほらと雪が降り始めて気温がぐっと下がり、持ってきていた白い羽織で朧を頭から包むと、まるで白無垢のように見えて頰が緩んだ。
「あの林にある。入り口に結界があって人は入らないようになってるんだ」
人里からかなり離れた山奥の少し開けた場所で猫又から降りた雪男は、目印の大杉の前に立つと、指で複雑な図形を描いて息を吹きかけた。
ーーすると木々が道を譲るようにして動き、驚く朧の手を引いた雪男はぐいぐい前進する。
「そろそろ集落の連中が来る。お前はいつも通りにしてればいいから」
「は、はい…」
前方が開けてくると、あちこちに家屋が連なっているのが見えた。
道も綺麗に整備されていて、連絡もなく、そしてここを飛び出て以来戻って来ることがなかった雪男の帰還にすれ違う人々が驚きの声を上げる。
「彼の方は氷雨様では…?」
「おお本当だ!…で…隣の方は…?」
ひそひそと聞こえる声に朧の緊張が高まると、雪男は皆の前でわざと朧を抱き上げてその存在がいかに大切であるかを示して黙らせる。
「ちょ…お師匠様…!」
「いちいち説明するの面倒だしこれでいい。さ、鬼姑に会いに行くぞ、いいか?」
「…はい!」
気合いを入れて強く頷いた。
巾着から白粉と紅を出して丁寧に化粧をした。
…ある意味戦いになる。
こうして姿だけでも武装して気合いを入れないと、氷麗の冷たい言葉に心が凍てついてしまう。
「んん……早いな…おはよ」
「おはようございます。早く準備して行きましょう。でないと夜までに間に合わないかも」
化粧をすると幼さが消えて女の顔になる朧を背中から抱きしめた雪男は、緊張して強張っている朧の頭を何度も撫でて振り向いた朧の唇を奪った。
「もうっ!紅が取れちゃう」
「そんなんしなくても綺麗だって。俺がついてるから心配するな。飯食ってからすぐ出よう」
着替えた後朝餉を食べて外に出ると、猫又が欠伸をしながら朝陽を浴びてごろごろ転がっていた。
「猫ちゃんお待たせ。行こっか」
集落の入り口まで歩いて行くと喉を鳴らす猫又に乗り、一路最北に位置する故郷の集落を目指す。
途中ちらほらと雪が降り始めて気温がぐっと下がり、持ってきていた白い羽織で朧を頭から包むと、まるで白無垢のように見えて頰が緩んだ。
「あの林にある。入り口に結界があって人は入らないようになってるんだ」
人里からかなり離れた山奥の少し開けた場所で猫又から降りた雪男は、目印の大杉の前に立つと、指で複雑な図形を描いて息を吹きかけた。
ーーすると木々が道を譲るようにして動き、驚く朧の手を引いた雪男はぐいぐい前進する。
「そろそろ集落の連中が来る。お前はいつも通りにしてればいいから」
「は、はい…」
前方が開けてくると、あちこちに家屋が連なっているのが見えた。
道も綺麗に整備されていて、連絡もなく、そしてここを飛び出て以来戻って来ることがなかった雪男の帰還にすれ違う人々が驚きの声を上げる。
「彼の方は氷雨様では…?」
「おお本当だ!…で…隣の方は…?」
ひそひそと聞こえる声に朧の緊張が高まると、雪男は皆の前でわざと朧を抱き上げてその存在がいかに大切であるかを示して黙らせる。
「ちょ…お師匠様…!」
「いちいち説明するの面倒だしこれでいい。さ、鬼姑に会いに行くぞ、いいか?」
「…はい!」
気合いを入れて強く頷いた。

