主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

如月の講義はいたって真面目だった。

また雪男も大抵のことは理解していたため、詰まることなく話は進む。


「大体はこんな感じだ。理解したか?」


「ああ問題ない。俺は百鬼だから家業は範疇外だけど、お前が仕切ってたのは知らなかったよ」


「長女だからな私は。朧、喉が渇いた」


「はい、今すぐ」


雪男が立ち上がった朧を上目遣いに見ると、如月は内心ほくそ笑んで部屋を出て行く朧を見送った後ーー雪男の膝にのしっと上がって両肩をなかなかの力で掴んだ。


「こ…こらこらやめなさい」


「もう朧を抱いたのか?」


言葉が詰まった雪男の正直な態度に如月は思い切り舌打ちをして嵌めている手袋で雪男の頬を撫でた。


「貴様のせいで私は歪んでしまった。早くに嫁に出されて貴様に会うことを禁じられていたが、朧の祝言という目出度い行事が行われることでようやく会えたぞ」


まさに肉食獣。

三白眼気味の黒瞳はひたと雪男を見据えてため息をつく雪男の喉笛を掴んだ。


「ため息をつくな。何がおかしい」


「いや、相変わらず餓鬼だなって思ってさ。猪突猛進の餓鬼大将。欲しいものは力ずくで手に入れるじゃじゃ馬娘。変わってなくて安心したよ」


ーー自分のせいで早くに嫁に出されたことについては雪男も責任を感じていたが、要するに如月は積年の恨みを晴らしに来たようなもので、抵抗すればするほど燃え上がる性質であることも分かっているから抵抗しないことにした。


「危うく私は貴様に囚われたまま一生独り身だったかもしれないんだぞ。どう責任を取る?」


その間如月はさわさわとあちこちを触りまくり、そこは抵抗しなければと力勝負のように如月の両手を封じ込めた。


「俺のおかげでいい旦那に巡り会えてよかったろ?感謝しろ!」


「物は言いようとはまさにこのことだなあ?覚えてろよ、滞在中愛玩しまくるからな」


「姉様、お茶です」


襖が開いて朧が入って来た時はちゃんと畳に正座して澄まし顔になった如月に雪男が吹き出す。


「お師匠様?」


「ふふ、なんでもないよ。さ、それ飲んだら講義再開な」


変わらないことが美徳の時もある。

悪しき風にならず相変わらずの如月だったことについ笑い声が漏れた。