竹林を抜けて屋敷に戻った息吹は、久々に長時間歩いたので完全に息を切らしながら縁側に腰掛けた。
「よいしょ。はぁはぁ…お腹が重たいなあ…」
「息吹、出歩くなと言ったはずだぞ。どこに行っていた?」
「あ、主さま。銀さんのお家に言ってたの。あのね、若葉も一緒に実家に行くことになったから。私の身の回りのお世話をしてくれるんだって」
「…若葉が?銀はなんと言っていた?」
つらそうにしている息吹を労わるように背中を撫でてやった主さまが問うと、息吹はにこーっと笑って主さまの肩に頭を預けた。
「銀さんは渋々許したって感じだったよ。多分毎日通って来るんじゃないかな。主さまも毎日通ってくれるでしょ?」
「ああ。だが雪男は駄目だぞ。お前の出産に立ち会うなど立場を超えている」
「はあ?立場ってなんだよ。俺は息吹のことを好いてるけど、それとこれとは別だろ。ったく…もう何人目だと思ってるんだ?全然立ち会わせてくれないじゃんか」
不満を口にしたのはいつから立ち聞きをしていたのか、いつのまにか雪男がどすんと隣に腰掛けてきた。
息吹は笑顔で雪男を迎えたが、すっかり元の姿に戻ってしまった雪男の存在は主さまにとっては邪魔で脅威でしかない。
「何人目であっても立ち会わせない。お前は俺と息吹の子をあやしていればいいんだ」
「雪ちゃんごめんね、主さまがいいって言ったら私もいいから」
「ふん、絶対許してくれるもんか。あ、おい、走り回るな!」
屋敷の廊下で走り回っている小さな童子たちを追いかけて雪男が居なくなると、主さまはそろりと腕を伸ばして息吹の肩を抱いた。
「ねえ、銀さんと若葉ってまるで昔の私たちみたいだと思わない?そうなると…いつかは私たちみたいに夫婦になるのかなあ?」
「…若葉は間違いなく人だ。お前のように永遠に生きる者じゃない。…深入りすると互いにつらい思いをするだけだぞ」
「でも好きになったらその気持ちって捨てられないでしょ?私だってそうだったもん。主さまは?そうじゃなかった?」
ぷうっと頬を膨らませた息吹の可愛らしさに内心悶えまくった主さまは、努めて冷静に息吹の髪を撫でながら庭を眺めた。
「…同じだ。だが深入りしないことを願っている。…苦悩していた数年前を思い出す」
「うん、そうだね…」
――妖と人は相いれない存在ではない。
身を以てそれを知っている主さまと息吹は、雪男の目を盗んで抱き合った。
「よいしょ。はぁはぁ…お腹が重たいなあ…」
「息吹、出歩くなと言ったはずだぞ。どこに行っていた?」
「あ、主さま。銀さんのお家に言ってたの。あのね、若葉も一緒に実家に行くことになったから。私の身の回りのお世話をしてくれるんだって」
「…若葉が?銀はなんと言っていた?」
つらそうにしている息吹を労わるように背中を撫でてやった主さまが問うと、息吹はにこーっと笑って主さまの肩に頭を預けた。
「銀さんは渋々許したって感じだったよ。多分毎日通って来るんじゃないかな。主さまも毎日通ってくれるでしょ?」
「ああ。だが雪男は駄目だぞ。お前の出産に立ち会うなど立場を超えている」
「はあ?立場ってなんだよ。俺は息吹のことを好いてるけど、それとこれとは別だろ。ったく…もう何人目だと思ってるんだ?全然立ち会わせてくれないじゃんか」
不満を口にしたのはいつから立ち聞きをしていたのか、いつのまにか雪男がどすんと隣に腰掛けてきた。
息吹は笑顔で雪男を迎えたが、すっかり元の姿に戻ってしまった雪男の存在は主さまにとっては邪魔で脅威でしかない。
「何人目であっても立ち会わせない。お前は俺と息吹の子をあやしていればいいんだ」
「雪ちゃんごめんね、主さまがいいって言ったら私もいいから」
「ふん、絶対許してくれるもんか。あ、おい、走り回るな!」
屋敷の廊下で走り回っている小さな童子たちを追いかけて雪男が居なくなると、主さまはそろりと腕を伸ばして息吹の肩を抱いた。
「ねえ、銀さんと若葉ってまるで昔の私たちみたいだと思わない?そうなると…いつかは私たちみたいに夫婦になるのかなあ?」
「…若葉は間違いなく人だ。お前のように永遠に生きる者じゃない。…深入りすると互いにつらい思いをするだけだぞ」
「でも好きになったらその気持ちって捨てられないでしょ?私だってそうだったもん。主さまは?そうじゃなかった?」
ぷうっと頬を膨らませた息吹の可愛らしさに内心悶えまくった主さまは、努めて冷静に息吹の髪を撫でながら庭を眺めた。
「…同じだ。だが深入りしないことを願っている。…苦悩していた数年前を思い出す」
「うん、そうだね…」
――妖と人は相いれない存在ではない。
身を以てそれを知っている主さまと息吹は、雪男の目を盗んで抱き合った。

