主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「本当に如月姉様とは何もなかったんですね?」


「あんな馬鹿力娘、女として見たこともねえよ。そりゃ俺も最初は告白されて戸惑ったけどさ、その時まだ俺は息吹を好きだったし」


「…ふうん」


「待て待て、過去の話だぞ。朧、あいつはとにかく俺を構ってくるけど誤解するなよ。いいな?」


「……はあい」


「返事が悪い!」


「…お師匠様。ぎゅってして」


朔たちはすでに広間から退出していてまだ畳に突っ伏していた雪男は、朧の手を引っ張って横に寝せると、ぎゅうっと抱きしめた。


「これでいいか?誰かに見られたら…」


「見られたって私たち夫婦になるんだからいいじゃないですか」


そっか、と返した雪男は、何やら良い香りのする朧の首筋に顔を寄せて息を吹きかけた。


「ちょ…お師匠様…っ」


「こんくらいいいじゃん。如月が戻ってきたら多分祝言までまともに触れねえ…」


「え…そうなんですか?じゃあ私も…」


胸元に潜り込むと雪男が身体に腕を回して密着して見つめ合う。

…如月のことは気になったが雪男が強い口調で関係を否定するので信じることにした。


ーーそして戻って来た如月は、ふたりが抱き合って寝転んでいるのを見てにやりと笑みを浮かべた。


「ほう…私が幼い頃夢見た光景だな。雪男め、触れても火傷しないのは本当だったか」


幼い頃、想いを確かめたくて雪男に何度も触れて火傷させたことがある。

また自らも無傷ではいられず、凍傷を負っては父母や兄たちに心配をかけた。

あれはもう、良い思い出だ。


「ふふふ、だが雪男よ、貴様の想いは得られずともその身体を弄ぶことはできる。妹と共に愛でてやろう」


…なまじ輝夜と同じく偏執狂な面を持ち合わせる如月は、やわらかな笑みで朧と話している雪男の表情を見たことがなく、それをまだ羨ましく思う自身を叱咤した。


「如月よ、喜んでやらんか。お前には愛する夫が居るだろうが」


言い聞かせると少し楽になり、手袋を嵌めて雪男ににじり寄る。


妹を祝福する気持ちは真実。

ただ雪男を見ていると無性に愛玩したくなるのはもはや避けられない。


「雪男よ、貴様私の前でそんな無防備な姿を晒してもいいのか?」


ぎくっとした顔に、ぞくぞく。