主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

百鬼たちや父たちに挨拶をしてくると言って如月が外出すると、雪男は畳にばたりと倒れ込んで死んだ目をしていた。


「つらい…人生がつらすぎる…」


「あの、兄様…どういうことですか?」


「お前は知らないだろうから教えておこうか。お前は幼い頃から雪男に教育されたな?」


「はい」


「うちの兄弟は皆そうだ。だが姉妹たちはある程度成長すると早めに嫁に出される。何故か分かるか?」


「いいえ、どうして?」


輝夜が含み笑いをして突っ伏している雪男を眺めながら朔の代わりに答えた。


「雪男のせいなんですよ。物心がつき異性を意識し始めると、妹たちは傍の雪男を意識します。初恋が雪男では目が肥えてしまって大変ですから、父様は雪男に執心した如月を教訓にその後妹たちを早めに嫁がせたんですよ」


ーーまさか元凶が雪男だとは思わなかった朧は、きっと睨みつけて背中を思い切り叩いた。


「いてっ」


「お師匠様が色気を振りまいたんじゃないんですかっ?!」


「違うって!」


「まあ正直言ってそれは仕方ないことだった。だからと言って父様は雪男を手放せず、仕方なくといったところだな」


「如月が雪男にまとわりつくようになってすぐ父様は婿を決めて嫁がせました。婿殿はたいそうな人格者で根気よく如月が振り向いてくれるのを待ち、今や熱々の夫婦仲ですからね」


「熱々でもお師匠様に首ったけに見えますけど…」


「じゃれているだけですよ」


「いやほんと勘弁して…。あいつ逆恨みしやがって…」


「ちなみに祝言の日まで滞在すると言っていた」


がばっと起き上がった雪男の顔は絶望感でいっぱいで、朔と輝夜が思わず吹き出す。


「お師匠様大丈夫ですよ!私がいつも傍に居ますから!」


頼もしい限りだったがため息は果てし無く長く続いた。