主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

輝夜が望んだ通り、朔は自室に輝夜を招き入れてふたり並んで寝ていた。

朔の部屋は何人たりとも入ることが許されない代々の主が寛ぐ部屋。

よって雪男も朔に招き入れられないと入ることはない。

…が、朧は昼を過ぎると断りもなく障子を開けて、雪男を慌てさせた。


「兄様、もうお昼ですよ。起きてっ」


「お、おい、怒られるぞ…」


ーーだが朔は怒ることなく輝夜とふたりして突っ伏した姿勢で寝ていて、その手をしっかりと握っていた。

それは幼い頃朔がすぐどこかへ消えてしまう輝夜を迷わせないようにするためのもの。

目を細めてそれを懐かしんだ雪男は、寝ぼけた薄目でじっとこちらを見ている朔と目が合ってしまった。


「主さま、文が沢山届いてる。俺が分けとくから後で見…」


「…入れ」


招かれて緊張しつつ中へ入ると、輝夜がちいさな欠伸をしながら起きた。


「おや…私と兄さんの情事を盗み見する不届き者が居ますね…」


「厄介な冗談を言うな。雪男、今夕にお前たちのことを皆に言うからな」


「え…っ、兄様、いいんですかっ?」


「うん、これはもう決定事項だから言っても問題ないよ」


「ありがとうっ、兄様!」


「うっ」


朔の背中に馬乗りになって喜ぶ朧とは対照的に、雪男は朔の枕元に座って不安顔。


「百鬼の中には朧に惚れてる奴も居たとか居ないとか聞いてるけど…大丈夫かな」


「その時は俺とお前を倒したならば破談もありかもと茶化してやる」


朔と雪男に勝てる妖などそうそう居ない。

今度は輝夜の胸の中に潜り込んで騒いでいる朧が能天気に見えてため息をついた雪男に朔が起き上がってさらさらの黒髪をかき上げながら魅惑的に微笑んだ。


「さてこれで本当に義兄弟となるわけだ。義兄さんと呼んでみろ。ほら」


迫られて狼狽えた雪男が後退り、朔が膝をつきながら隅まで追従する。


「可愛がってやるからな」


「待って下さい兄さん。本当の弟の方をもっと可愛がって下さい」


非難の声を上げる輝夜の元にまた戻った朔は再び寝転がり、兄弟妹三人で川の字になると、揃って雪男ににっこり笑いかけた。


「これからも末長くよろしく」


「お…おう…こ、こっちの方こそ、よ、よろしくな…」


言葉に詰まりまくり、またもみくちゃにされた。