秋の虫が庭で鳴いていた。
月はもう欠け始めていたが、日々がゆっくりと過ぎて行く生の末に、秋など今まで愛でたことがなかったと思い返し、雪男は縁側で感慨深げに月見団子を頬張っていた。
ーー十六夜は息吹と夫婦になってからは食事を摂るようになった。
それは遊びでしかなかったが、朧も食事を摂るし、朔も気まぐれに食すことが多い。
これを習慣づけなければ。
腹が減らないだけで味覚はあるのでそれは苦にならないだろう。
「お師匠様…お風呂、上がりました」
「ん。朧、月が綺麗だぜ。息吹が団子作ってくれたから一緒に……な、なんだよ」
何故か胸元は緩く、湯上りで色っぽかったが体温ではない熱さには滅法弱い。
だが傍で潤んだ目で見つめられると昨晩のことが思い出されて口ごもった。
「ふたりきりですね…って言いたいだけです」
「ふたりじゃないぞ、山姫と白雷も…」
「あのふたりは部屋に篭って出てきません。お師匠様……氷雨」
…真名を呼ばれて身体がずきんと痛むような感覚がした。
昨晩貪り合うように愛し合ったがその熱は未だ冷めず、必死に誤魔化しているのにこの娘ときたら…
「いいや!その誘惑には乗らないぞ!まあ…でもちょっとならいいか…」
湯の熱も引いて触れるようになると、朧を背中から覆い被さるように抱きしめて共に月夜を見上げた。
「昨日のは…幻じゃないですよね?」
「ああ、幻じゃない。だけどさ、義理は通さないと。祝言の日まで我慢だ我慢…」
己に言い聞かせるように呟く雪男が面白く、横向きに座り直した朧は誘惑するように雪男の頰に触れて顔を寄せると口付けをした。
「どこまでなら…いいんですか?」
「だーかーらー!誘惑すんなって…。こっちは結構必死なんだぜ…」
「こそこそしたくないんです。兄様はいつになったら皆に言うんでしょうか」
「時期を待ってるんだと思うけどな。…こっち来い!」
押し倒すようにして朧と寝転がり、鈴虫の声に耳を傾ける。
こうして春夏秋冬をふたりで愛でるーー
その日はもう近い。
月はもう欠け始めていたが、日々がゆっくりと過ぎて行く生の末に、秋など今まで愛でたことがなかったと思い返し、雪男は縁側で感慨深げに月見団子を頬張っていた。
ーー十六夜は息吹と夫婦になってからは食事を摂るようになった。
それは遊びでしかなかったが、朧も食事を摂るし、朔も気まぐれに食すことが多い。
これを習慣づけなければ。
腹が減らないだけで味覚はあるのでそれは苦にならないだろう。
「お師匠様…お風呂、上がりました」
「ん。朧、月が綺麗だぜ。息吹が団子作ってくれたから一緒に……な、なんだよ」
何故か胸元は緩く、湯上りで色っぽかったが体温ではない熱さには滅法弱い。
だが傍で潤んだ目で見つめられると昨晩のことが思い出されて口ごもった。
「ふたりきりですね…って言いたいだけです」
「ふたりじゃないぞ、山姫と白雷も…」
「あのふたりは部屋に篭って出てきません。お師匠様……氷雨」
…真名を呼ばれて身体がずきんと痛むような感覚がした。
昨晩貪り合うように愛し合ったがその熱は未だ冷めず、必死に誤魔化しているのにこの娘ときたら…
「いいや!その誘惑には乗らないぞ!まあ…でもちょっとならいいか…」
湯の熱も引いて触れるようになると、朧を背中から覆い被さるように抱きしめて共に月夜を見上げた。
「昨日のは…幻じゃないですよね?」
「ああ、幻じゃない。だけどさ、義理は通さないと。祝言の日まで我慢だ我慢…」
己に言い聞かせるように呟く雪男が面白く、横向きに座り直した朧は誘惑するように雪男の頰に触れて顔を寄せると口付けをした。
「どこまでなら…いいんですか?」
「だーかーらー!誘惑すんなって…。こっちは結構必死なんだぜ…」
「こそこそしたくないんです。兄様はいつになったら皆に言うんでしょうか」
「時期を待ってるんだと思うけどな。…こっち来い!」
押し倒すようにして朧と寝転がり、鈴虫の声に耳を傾ける。
こうして春夏秋冬をふたりで愛でるーー
その日はもう近い。

