主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「主さまは完璧だと思うか?」


「…ええ、あのようにお強く、お美しく、清廉潔白な方はいらっしゃいません」


賛辞の嵐。

雪男は檻を挟んで焔のすぐ傍に座ると腕を組んで首を振った。


「いや、それは違うな」


「…あの方に欠点があるとでも?先代と違い人望もあり、お優しく、誰の話にも耳を傾けていて…」


「主さまはな、時々居なくなるんだ」


「…え…」


「そりゃあ息抜きもしたくなるよな?先代ほどじゃないけど適当に女遊びもしてるはずだし、何より主さまは…わがまますぎる!」


ーー渾身の力説。

愚痴ともとれるその力説に焔は唖然として言い返すこともできない。

だが朧は笑いを堪えるのに必死で口を両手で覆っていた。


「俺は主さまが豆みたいな時から知ってるから分かる。素直に見えるけど先代によく似て我が強いしこうと決めたら意地でも貫く。それで周りに被害が出ても御構い無し。それを誰が処理すると思ってるんだ?この俺だ!」


過去の様々な朔のわがままを思い返してわなわなと手を震わせた雪男は、ぽかんとしている焔につらつらと言い聞かせた。


「主さまは欠点だらけだ。ただ面の皮が厚いから分かりにくいだけだからな。無理難題ふっかけてきて楽しんでるし、実は性格悪いんだ。冷静になってよく観察してみろよ」


…なんだか肩の力が抜けてくにゃっとなった焔は、ふっと笑って目を伏せる。


「そうですか…ですが私は主さまを諦めません。あなたの助言には感謝いたします。今一度機会を与えて頂けるならば、何でもします」


「いいとも、機会をやろう」


ーー背後からの声に、雪男が飛び上がりそうなほどに身体を揺らす。

全身から冷や汗が吹き出て、見たくはないが見なければーーゆっくり振り返ると…


にっこり微笑んでいる朔と目が合ってしまい、何もかもが停止した。


「あ、あの…主さま…今の聞いて…」


「女遊びしているとか面の皮が厚いとかわがままだとか誰のことを言っているのか時間がかかったが俺のことだな?」


…つまり最初から聞いていたわけで…


「焔、機会を与えてやる。だが今しばらくそこで反省しろ」


「!はい…!」


「氷雨、お前はこれから説教だ。朧、少し借りるよ」


「はい、お師匠様頑張ってくださいね」


兄妹、にっこり。