大好きな父と抱擁を交わした後、朔と朧に取り囲まれて何やら焦った顔をしている雪男の右の首筋に大きな傷が見えた朧は小さな悲鳴を上げて駆け寄った。
「お師匠様!?首に傷が…!」
「え?ああ、まあ大したことな…」
「手当てしなきゃ!来て下さい!」
朧が有無を言わさず手を引っ張って自室に向かっていくのを兄弟は微笑ましく見守る。
「あいつの行く末が見えたな」
「ええ、すでに尻に敷かれてますね。うちの父様と母様を見ているようですよ」
ーーそんな雪男の傷は決して浅くはなく今も血が出ていた。
部屋に着くなり無理矢理座らされ、手拭いで血を拭われた時にはじめて痛みを感じて顔をしかめると、朧は恨み節を炸裂させた。
「父様ひどい!こんな深い傷が…!」
「いや、殺されずに済んだだけまし。こんなのすぐ治るし」
雪男が目を伏せると白く長い睫毛が差し込む陽光に淡く輝いて、無性に今噛み付きたいと思った。
血の匂いもなんとも芳しく、手拭いを押さえている大きな手と長い指も妙に艶かしく映り、朧の喉が鳴った。
「…ん!?お、お前、目が濡れてるぞ…」
「だってお師匠様…なんかとても…美味しそう…」
「やめろ!性的な目で俺を見るな!ここをどこだと思ってんだ!」
「どこだっていいじゃないですか。お師匠様、ちょっとだけ…」
手拭いを押さえている手を取って外した朧は、血の滲む傷口をぺろりと舐めた。
…惚れた男だからかなのか、その味はうっとりするほど美味く、押し倒しそうな勢いで顔を寄せる朧の両肩を強く押してなんとか離れさせる。
「やーめーろーっ!せっかく助かった命を無駄にさせるな!」
「お師匠様のけち。じゃあお薬塗りますね」
唇を尖らせながら化膿止めを塗り込み、そこでようやく一息ついた雪男は、朧の手を取って口元に寄せると小さく口付けをして朧をどきっとさせた。
「ありがとな。じゃっ、焔のとこに行くか」
「お師匠様、絶対殺さないで下さいね?」
「ああ。嫌味言いまくってやる」
憧憬を抱く気持ちは十分、分かっている。
だが焔はどこかで間違えたのだ。
ーー雪男は朧と地下に向かいながら、その心情を思いやった。
「お師匠様!?首に傷が…!」
「え?ああ、まあ大したことな…」
「手当てしなきゃ!来て下さい!」
朧が有無を言わさず手を引っ張って自室に向かっていくのを兄弟は微笑ましく見守る。
「あいつの行く末が見えたな」
「ええ、すでに尻に敷かれてますね。うちの父様と母様を見ているようですよ」
ーーそんな雪男の傷は決して浅くはなく今も血が出ていた。
部屋に着くなり無理矢理座らされ、手拭いで血を拭われた時にはじめて痛みを感じて顔をしかめると、朧は恨み節を炸裂させた。
「父様ひどい!こんな深い傷が…!」
「いや、殺されずに済んだだけまし。こんなのすぐ治るし」
雪男が目を伏せると白く長い睫毛が差し込む陽光に淡く輝いて、無性に今噛み付きたいと思った。
血の匂いもなんとも芳しく、手拭いを押さえている大きな手と長い指も妙に艶かしく映り、朧の喉が鳴った。
「…ん!?お、お前、目が濡れてるぞ…」
「だってお師匠様…なんかとても…美味しそう…」
「やめろ!性的な目で俺を見るな!ここをどこだと思ってんだ!」
「どこだっていいじゃないですか。お師匠様、ちょっとだけ…」
手拭いを押さえている手を取って外した朧は、血の滲む傷口をぺろりと舐めた。
…惚れた男だからかなのか、その味はうっとりするほど美味く、押し倒しそうな勢いで顔を寄せる朧の両肩を強く押してなんとか離れさせる。
「やーめーろーっ!せっかく助かった命を無駄にさせるな!」
「お師匠様のけち。じゃあお薬塗りますね」
唇を尖らせながら化膿止めを塗り込み、そこでようやく一息ついた雪男は、朧の手を取って口元に寄せると小さく口付けをして朧をどきっとさせた。
「ありがとな。じゃっ、焔のとこに行くか」
「お師匠様、絶対殺さないで下さいね?」
「ああ。嫌味言いまくってやる」
憧憬を抱く気持ちは十分、分かっている。
だが焔はどこかで間違えたのだ。
ーー雪男は朧と地下に向かいながら、その心情を思いやった。

