「焔さんは兄様に憧れてて、百鬼に選ばれて兄様の傍に…お師匠様の立ち位置を望んでいたんです」
「……それって…」
焔が自分に嫉妬して、朧に八つ当たりしたということか?
自分が居なければ選ばれるとでも?
あの朔を制する自信があるとでも?
…ああ見えて十六夜の長子。
押しが強く我の強い面もあり、穏やかに見えるが火がつくと十六夜以上に恐ろしく感じる時もある朔を、憧れや羨望の強い焔が制することは不可能だろう。
朔の言いなりになり、なんでも言うことを聞く側近など朔は求めていない。
焔のあまりの浅知恵に雪男はつい鼻で笑って朧を動揺させた。
「お師匠様…?」
「ああいや、ごめん。…で?」
「私を利用してあなたを追い出して兄様に選ばれる…焔さんはそれだけを願って私を化かしたんです」
「いや意味分かんねえよ。どうしてそうなった?」
「…朝起きたら焔さんが裸で寝てて…私も裸で……私がそれで勘違いして…焔さんは冗談だって言うつもりだったって…」
「…じゃあお前は何もされてないんだな?」
「…………」
嫌な沈黙だ。
ぽすっと襖を叩いた雪男がもう一度念を押す。
「何もされてないんだろ?」
「……口付けは…されたみたいです…」
ーー襖が勢いよく開き、驚いた朧が見上げると、あかさらまにむっとした表情の雪男が朧の手を引っ張って立たせた。
…あたたかい手。
どんなに逃げようとも、どんなことがあろうとも、この手は相変わらずあたたかい。
「あいつ…八つ裂きにしてやる…!」
「!お師匠様、焔さんは今牢に居ます。兄様には寛大なる処罰をと私が…」
「お前が一番苦しんだんだろうが!…ほんっと…ふざけんなよ…!」
力いっぱい朧を抱きしめた。
今まで互いに勘違いの連続で、逃げては逃げられーーしなくてもいい苦労を味わって悩んで…
「それでも俺は…お前を諦めれなかった…」
「…っ、私も…私もごめんなさいお師匠様…!私、もう逃げません。もうあなたを離さない。だから…」
その唇を唇で塞ぐ。
もう言葉など必要なかった。
「……それって…」
焔が自分に嫉妬して、朧に八つ当たりしたということか?
自分が居なければ選ばれるとでも?
あの朔を制する自信があるとでも?
…ああ見えて十六夜の長子。
押しが強く我の強い面もあり、穏やかに見えるが火がつくと十六夜以上に恐ろしく感じる時もある朔を、憧れや羨望の強い焔が制することは不可能だろう。
朔の言いなりになり、なんでも言うことを聞く側近など朔は求めていない。
焔のあまりの浅知恵に雪男はつい鼻で笑って朧を動揺させた。
「お師匠様…?」
「ああいや、ごめん。…で?」
「私を利用してあなたを追い出して兄様に選ばれる…焔さんはそれだけを願って私を化かしたんです」
「いや意味分かんねえよ。どうしてそうなった?」
「…朝起きたら焔さんが裸で寝てて…私も裸で……私がそれで勘違いして…焔さんは冗談だって言うつもりだったって…」
「…じゃあお前は何もされてないんだな?」
「…………」
嫌な沈黙だ。
ぽすっと襖を叩いた雪男がもう一度念を押す。
「何もされてないんだろ?」
「……口付けは…されたみたいです…」
ーー襖が勢いよく開き、驚いた朧が見上げると、あかさらまにむっとした表情の雪男が朧の手を引っ張って立たせた。
…あたたかい手。
どんなに逃げようとも、どんなことがあろうとも、この手は相変わらずあたたかい。
「あいつ…八つ裂きにしてやる…!」
「!お師匠様、焔さんは今牢に居ます。兄様には寛大なる処罰をと私が…」
「お前が一番苦しんだんだろうが!…ほんっと…ふざけんなよ…!」
力いっぱい朧を抱きしめた。
今まで互いに勘違いの連続で、逃げては逃げられーーしなくてもいい苦労を味わって悩んで…
「それでも俺は…お前を諦めれなかった…」
「…っ、私も…私もごめんなさいお師匠様…!私、もう逃げません。もうあなたを離さない。だから…」
その唇を唇で塞ぐ。
もう言葉など必要なかった。

