主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

屋敷に残っていた輝夜は後を任されたため、事の収拾にあたっていた。

まず焔だがーー銀の叱責より若葉の涙の方がよほど堪えるらしく、耳を倒し、尻尾を巻いてうなだれていた。


「母様、本当にごめんなさい…」


「ううん、若葉ちゃんが謝ることないよ。それに焔ちゃん反省してるみたいだし…後は朔ちゃんと朧ちゃんが頑張ってくれるから」


自分が仲介に入らずともここはうまく丸くなりそうで、何が起きたのかわからず目を白黒させている百鬼たちになんと説明しようかと考えているとーー


「輝夜、こっちに来い」


「うわ…これは…やばいですね…」


居間に居た十六夜に声をかけられて思わず引きつった笑みを浮かべた輝夜はさらに十六夜の隣に晴明も居るのを見て手を振った。


「ああいえ、私は忙しいので…」


「すぐ済む。来い」


家長の命には背けず、仕方なく足取り悪く十六夜の前に座った輝夜は思いもしないことを十六夜に告げられた。


「輝夜、鬼灯を出せ」


「え…いやですよ何なんですか?」


無言の圧力。

…隠していることを悟られたーー輝夜は仕方なく口から鬼灯を取り出して手に乗せると、十六夜と晴明に見せた。


「…随分と色が落ちたな。やはりお前は咎を受けたんだな?」


「ええまあ、少々干渉が過ぎましたからね。兄さんたちには内緒ですよ」


「…何故お前ばかりが損な役回りを引き受けるんだ?お前は欠けている何かを取り戻す機会がまた遠去かったんだぞ?」


ーー欠けている何か。
父たちは知らないが、自分は産まれた時からそれが何であるか知っている。


「いいじゃないですか初めて会った妹の危機だったんですから。私は私のしたいように動きました。重ねて言いますが兄さんたちには内緒ですよ」


十六夜が不機嫌な顔になり、晴明は十六夜の握りこぶしを扇子で叩いてにこりと笑った。


「そなたは生きたいように生きてはおらぬ故喜ばしいとも言える。そなたの見た未来になりそうか?」


輝夜が無言で微笑んだ。

最上級の笑みに、これから訪れる結末に一切悲観することはないのだと、分かった。