あの夜ーー焔は酒を手に朧の部屋を訪問した。
それはいつものことで、誰も気にしない。
朧の話相手として認識されており、また朧も異性として意識したこともなかった。
「朧様、今夜はご機嫌が良さそうですね」
「え、そ、そうですか…?」
はい、と答えた焔は朧の傍に座り、ふたり分の盃を出してやはり嬉しそうにしている朧の表情に笑んだ。
「よろしければお聞きしますよ」
「あ…でもまだ誰にも言えないので…」
「そうですか。ですが良いことがあったのは分かります。一献どうぞ」
「私まだお酒飲んだことないんです。でも…少しだけ」
言われた通り少しだけ酒を注いだ焔は、ここに来てからずっともやもやしていることを朧に問うた。
「側近の雪男様は最近百鬼夜行に出ておられますね。理由を知っていますか?」
「えっ!?し、知りません…兄様が決めたことだと思います…」
ーー明らかに挙動不審だ。
目は宙を彷徨っているし、何故か丹念に化粧もしている。
これはまさか…
「私が幼かった頃から雪男様は主さまの側近でした。ですが百鬼夜行には出ていなかった…」
「焔さんはお師匠様に関心があるんですか?」
「ええ、まあ。共に戦いもしましたが、あの刀は素晴らしく美しいし、雪男様も戦闘に長けておられた。…主さまが重宝するわけです」
「そうなんです。お師匠様はとても綺麗で強くて…優しくて…」
話しながら何を思い出したのか顔が赤くなった朧に目を見張っていると、動揺を隠すため手に持っていた酒を一気に飲み干す。
たいそう飲みっぷりは良かったがーー確か初めて飲むと言っていたはず…
「朧様、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫…です…ああ、今夜は星が綺麗ですね…」
盃に酒を足すと、またそれを口に運んでは美しい笑みを履くーー鬼族は滅法酒に強い者が多いため焔は何の気なしに酒を足し続けていたが、突然、朧が焔を見つめて恍惚とした表情になった。
「朧様…?」
「お師匠様…私…あなたのお嫁さんになれるなんて、本当に幸せ者です…」
しなだれかかってくる朧。
突然のことで抱き止めることしかできない焔。
「お師匠様…」
見上げて来た朧が唇をねだる。
焔は、胸を焦がす憎しみや嫉妬の渦を抑えることができず、不穏な感情を芽生えさせた。
ーー滅茶苦茶にしてやる、と。
それはいつものことで、誰も気にしない。
朧の話相手として認識されており、また朧も異性として意識したこともなかった。
「朧様、今夜はご機嫌が良さそうですね」
「え、そ、そうですか…?」
はい、と答えた焔は朧の傍に座り、ふたり分の盃を出してやはり嬉しそうにしている朧の表情に笑んだ。
「よろしければお聞きしますよ」
「あ…でもまだ誰にも言えないので…」
「そうですか。ですが良いことがあったのは分かります。一献どうぞ」
「私まだお酒飲んだことないんです。でも…少しだけ」
言われた通り少しだけ酒を注いだ焔は、ここに来てからずっともやもやしていることを朧に問うた。
「側近の雪男様は最近百鬼夜行に出ておられますね。理由を知っていますか?」
「えっ!?し、知りません…兄様が決めたことだと思います…」
ーー明らかに挙動不審だ。
目は宙を彷徨っているし、何故か丹念に化粧もしている。
これはまさか…
「私が幼かった頃から雪男様は主さまの側近でした。ですが百鬼夜行には出ていなかった…」
「焔さんはお師匠様に関心があるんですか?」
「ええ、まあ。共に戦いもしましたが、あの刀は素晴らしく美しいし、雪男様も戦闘に長けておられた。…主さまが重宝するわけです」
「そうなんです。お師匠様はとても綺麗で強くて…優しくて…」
話しながら何を思い出したのか顔が赤くなった朧に目を見張っていると、動揺を隠すため手に持っていた酒を一気に飲み干す。
たいそう飲みっぷりは良かったがーー確か初めて飲むと言っていたはず…
「朧様、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫…です…ああ、今夜は星が綺麗ですね…」
盃に酒を足すと、またそれを口に運んでは美しい笑みを履くーー鬼族は滅法酒に強い者が多いため焔は何の気なしに酒を足し続けていたが、突然、朧が焔を見つめて恍惚とした表情になった。
「朧様…?」
「お師匠様…私…あなたのお嫁さんになれるなんて、本当に幸せ者です…」
しなだれかかってくる朧。
突然のことで抱き止めることしかできない焔。
「お師匠様…」
見上げて来た朧が唇をねだる。
焔は、胸を焦がす憎しみや嫉妬の渦を抑えることができず、不穏な感情を芽生えさせた。
ーー滅茶苦茶にしてやる、と。

