「息子よ、何があったのか話してくれないか」
冷たい地下牢に焔ひとりを置いて行くのは偲びなく、銀は真っ白な耳と尻尾を下げて柵越しに無表情の焔を見ていた。
ほぼ自主的にここへやって来て自分で牢に入り、一体何を考えているのか全く分からない。
「朧を孕ませたのは何故だ?お前は朧に気がある風でもなかった。…衝動的なことか?」
本性は九尾という狐の獣の妖。
衝動的になることは時々あるがーー朧は焔が敬愛して止まない朔の溺愛する妹だ。
手など勝手に出そうものなら殺されても文句は言えない…そういう状況で何故凶事に至ったのかーー
「息子よ、このままでは俺も十六夜や息吹や朔に顔向けできん。お前はこの父の居場所も奪ったのだぞ」
暗に出て行くと言った銀とようやく目を合わせた焔は、柵を握ってすぐ傍に座っている銀にぼそりと告げた。
「こんなはずでは…」
「焔」
ーー地上に上がる階段の方から静かに降る声。
はっと顔を上げた焔は、耳をぴんと立てて立ち上がった。
朔の背後には朧が居る。
むしろ全員集合していて眉をひそめた焔に近付いた朔は、朧を前に押し出して焔と対面させた。
「さっきお前は雪男との会話の中で妙なことを口走ったな。おかしなことだ、と。何か隠しているなら今話せ。話せないならお前を放逐する」
ーーつまり絶縁宣言。
幼い頃朔によく遊んでもらい、その強さと美しさに憧れて腕を磨いて強くなり、百鬼になるべくそれに見合う実力をつけてきたつもりだったのにーー
朔の傍にはいつも雪男が。
比類なき強さと皆に慕われる信頼感のある男がいる限り、自分に居場所はない。
「…そうですか」
「お前は銀の息子で、朧の良き話相手だった。百鬼夜行に連れて行き、期待もしていた。その俺の期待を全て裏切るようなまねをした理由を話せ。…これ以上事態を悪化させるな」
ーー朔が心の底から苦悩している表情になっていて、聡い焔はそれで雪男が去ったことを知った。
だが雪男が去ったところで自分の居場所はない。
「最初から…私の居場所などなかったということか…」
「…なに?」
「…いいでしょう、お話します。あの夜何が起きたかを」
朧を見つめた。
罪をその頰に塗りつけて不幸にさせてしまった娘を、見つめた。
冷たい地下牢に焔ひとりを置いて行くのは偲びなく、銀は真っ白な耳と尻尾を下げて柵越しに無表情の焔を見ていた。
ほぼ自主的にここへやって来て自分で牢に入り、一体何を考えているのか全く分からない。
「朧を孕ませたのは何故だ?お前は朧に気がある風でもなかった。…衝動的なことか?」
本性は九尾という狐の獣の妖。
衝動的になることは時々あるがーー朧は焔が敬愛して止まない朔の溺愛する妹だ。
手など勝手に出そうものなら殺されても文句は言えない…そういう状況で何故凶事に至ったのかーー
「息子よ、このままでは俺も十六夜や息吹や朔に顔向けできん。お前はこの父の居場所も奪ったのだぞ」
暗に出て行くと言った銀とようやく目を合わせた焔は、柵を握ってすぐ傍に座っている銀にぼそりと告げた。
「こんなはずでは…」
「焔」
ーー地上に上がる階段の方から静かに降る声。
はっと顔を上げた焔は、耳をぴんと立てて立ち上がった。
朔の背後には朧が居る。
むしろ全員集合していて眉をひそめた焔に近付いた朔は、朧を前に押し出して焔と対面させた。
「さっきお前は雪男との会話の中で妙なことを口走ったな。おかしなことだ、と。何か隠しているなら今話せ。話せないならお前を放逐する」
ーーつまり絶縁宣言。
幼い頃朔によく遊んでもらい、その強さと美しさに憧れて腕を磨いて強くなり、百鬼になるべくそれに見合う実力をつけてきたつもりだったのにーー
朔の傍にはいつも雪男が。
比類なき強さと皆に慕われる信頼感のある男がいる限り、自分に居場所はない。
「…そうですか」
「お前は銀の息子で、朧の良き話相手だった。百鬼夜行に連れて行き、期待もしていた。その俺の期待を全て裏切るようなまねをした理由を話せ。…これ以上事態を悪化させるな」
ーー朔が心の底から苦悩している表情になっていて、聡い焔はそれで雪男が去ったことを知った。
だが雪男が去ったところで自分の居場所はない。
「最初から…私の居場所などなかったということか…」
「…なに?」
「…いいでしょう、お話します。あの夜何が起きたかを」
朧を見つめた。
罪をその頰に塗りつけて不幸にさせてしまった娘を、見つめた。

