主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

地下の氷室に籠って色々考えてみたが結果何もまとまらず、上へ戻った時はすでに朔と輝夜と銀は百鬼夜行に出る準備をしていた。


…時間だ。

朧を連れ戻して、全てを告白させてーー焔と夫婦にさせるか?

朧を連れ戻して、全てを告白させてーー全てを許して自分と夫婦になるか?

どちらもとても想像し難い。

全てを許せるか?
そんな聖人ではないことくらい己が一番理解している。


「主さま、ちょっと出発を遅らせてくれないか」


「どうした?」


「朧を連れ戻しに行ってくる。帰ってくるか来ないのか…今日決めてもらうつもりだ。朧も了承したから無理強いじゃない」


「そうか、分かった。お前が戻ってくるまで遅らせる。…あまり思い詰めるなよ」


肩を叩かれ、十六夜と息吹夫婦が重たく頷く。

一瞬輝夜と視線を合わせて頷き合うと、雪男は最速で駆けて朧の元へ向かい、監視に建平屋を見張らせている木の上の猫又に声をかけた。


「お前はそこに居ろ。朧を連れ戻す時にお前が必要だからな」


「分かったにゃ」


気配を消さず、辺りが暗くなり始めた道を行くと、突然林の方から声がかかった。


「と、止まれ!妖め!」


「…お前が…小太郎か」


真っ青な髪と瞳、人知を超えた美貌ーー大妖の出現に小太郎は刀を向けて牽制する。


「そっちには何もないぞ。お前みたいな高等な妖がこの町に何の用だ!」


「俺は朧の身内の者だ。今まで世話になったな」


冷たい声と表情。
もしや朧はこの男から逃げていたのだろうか?

また雪男ももう何の遠慮もなく、ただの刀では自分を殺せないことを知っているため無造作に間合いに入った。


「じゃあ…別嬪さんはまさか…」


「あんな綺麗な女が人な訳ない。…もう終わりにさせたい。止めないでくれ」


殺気は全くなく、むしろ悲痛な表情の雪男に自然と刀が下がった小太郎は、必死に朧の心情を明かした。


「本当はあんたが好きで好きで仕方ないんだ。でも…」


「…子ができたんだろ。他の男との間に」


「分かってるなら許して抱きしめてやれよ!あんないい娘が逃げ続けるなんて酷だ!」


「そんなこと…分かってる」


歯を食いしばり、背を向けた雪男は恐らくこのやりとりを聞いているであろう朧の居る平屋に今度こそ向かう。


今度こそ、ちゃんと話してもらうために。