主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

“腹の子は元気か”

“父親は焔なのか”


ーーかまをかけた結果、朧はほぼそれを認めたも同然だった。


これをなんとか隠し通したくて逃げ回っていたのかと思うと…はらわたが煮えくり返る。

好きです愛していますという言葉に安心して胡座をかいた結果がこれか?

ならば何故想いが通じ合っている?
この手は朧に触れても火傷を負わず、また朧も凍傷を負わずーー何か抜け道のようなものが存在するのか?


「雪男」


「…輝夜か…」


帰還を予期していたのか、庭の奥深くの角に降り立った雪男を待ち受けていた輝夜は、力なくこつんと肩に頭を預けてきた雪男の背中を撫でた。


「朧とは話せましたか?」


「…いや…でも認めた。逃げてる理由を…」


「…そうですか」


「お前は最初から全てを知ってたんだよな?それを責めるつもりはない。…よくあんな秘め事をお前は誰にも言わず黙っていられるな…感心するよ」


「…雪男、よく聞いてください」


輝夜は囁くように声を潜めた。


「朧とあなたは未来で必ず結ばれます。ただそれが現世なのか来世なのか…それはあなたたちが歩む道標の先にある。あなたはどうしたい?朧を見放すのか…それともあたたかく受け入れるか」


雪男の真っ青な目が動揺に揺れる。
ただはっきりしているのはーー


「…朧がこんなにも懸命に隠そうとしてたのに、焔は雲隠れしたままだ。俺は…あいつを許さない。どんな理由があっても…朧を抱いて、子まで作ったのに…俺は焔を殺すかもしれない」


「間もなくですよ。間もなく彼は戻ってくる。問題はあなたと朧ですよ。どうするつもりですか」


「分からない…。夜また会いに行くって約束した。それまでは…考え続けたい」


「そうですか…ああ、兄さんにはまだ報告しないで。焔が会うなり真っ先に殺されてしまいますから」


うん、と小さく返事をした雪男が屋敷の方へ足取り悪く向かう。


「現世か、来世か…」


例え今互いの道が違えたとしても、近い未来か遠い未来か必ず結ばれる。


「朧…間違ってはいけないよ」


答えを。