主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

白兎は朧が屋敷を去ってここ一週間ほどの間、朔の傍にずっと居た。

朔から声はかからず、また白兎も声をかけない。
日中少しだけ眠り、滞在している先代とその妻、輝夜と朧について話をしたり和やかに見せていたがーー末妹をとても可愛がっていた朔に元気がないように見えて、戻って来た雪男の袖を握る。


「お兄様、主さまが…」


「…お前さ、大事な身体って…なんだと思う?」


「え?意味が分かりませんわ…」


「だよな…。主さまに報告はまだやめておくか」


「それよりお兄様、主さまの元気がなくて…心配ですわ」


白兎はどうやら開き直ったらしく、朔への好意を隠さなくなった。
ただやはりというか、朔の反応は薄いというよりも全くなく、縁側を見ると読書をしているように見えたが目は文字を追っていなかった。


「主さまも本当は心配でたまらないんだ。会いに行きたいはずなんだ。でも立場がそれを許さない。朧の意思を尊重してる。お前ももう帰れ。見込みはない」


…そんなことは朔の態度を見ていれば分かる。
居ても居なくても同じーーそんな扱いを受けながらも傍に居たいのは、強い者に焦がれる妖の本能が働くから。


「雪男」


「輝夜か。どうした?」


「そろそろ色々動き始めます。焔が戻ってくるのも近い。真相が分かるでしょう」


さあ、と風が吹いて意図的に前髪を伸ばして隠している輝夜の中性的な美貌が晒された。


「輝夜…俺は朧に会いたいんだ。声をかけて…話したい」


「それもいいでしょう。…そうすればいい。あなたに任せます」


妹の命運を。