雪男は朔の側近であり、百鬼たちを束ねたり相談を受けたり、朔の手伝いをしたりで朧に割く時間は限られている。
朔が百鬼夜行から戻ると朝港町に向かい、朧の住む平屋の見える木陰から様子を見て朧の好きな食べ物を軒先に置いては戻るーーそれを繰り返す。
朧は小太郎やその仲間が来た時にしか戸を開けない。
その一瞬でしか朧の顔を見れる機会はなく、朝必ず小太郎が朧に会いに行くことを知っている雪男はじっと待っていた。
待っていると、小太郎が食料を手にやって来た。
「別嬪さん、変わりはないかい?」
「はい、大丈夫です。小太郎さん、毎日ありがとうございます」
「いや、いいってことよ。で、身体の具合は?」
「……身体の…具合?」
どこか悪いのだろうか?
妖は滅多に病を患うことはないが、朧は半妖ーー体調を崩してここに滞在せざるを得ないのであれば、それは一大事だ。
まだ悪夢を見ていて眠れずにいるのならば、どう手助けをしてやればいいのだろうか?
「大事な身体なんだから無理はするんじゃねえよ」
「…はい」
じゃあな、と言って去って行く小太郎。
雪男の胸がざわつく。
「大事な身体…?」
妙な言い回しだ。
ただ単に体調を崩しただけでそんな言い方をするだろうか?
ーーそっと平屋に近付いて軒先の下に立つと、懐から凍らないように厳重に包んだ紙を開いて庭に咲いている数本の桜色の秋桜と良い香りのする金木犀の花びらを足元に置いた。
朧がずっと世話をしてきた花に気付くだろうか。
一度戸に目をやった後その場を離れて去ると、見計らったように戸が開く。
朧もまた雪男が現れる時間帯を把握していて、出入り口に食べ物を置いて行くことを知っていた。
「わあ…花…」
確か屋敷に植えている秋桜や金木犀は今が見頃。
それを知らせてくれる雪男の優しさやあたたかさにどうしても寂しくなってしまう。
「こんなことしてくれる価値なんて私にはないのに」
粗末な花瓶に秋桜を飾り、包み紙に金木犀の花びらを包んで懐に入れた。
雪男に抱きしめられている気がして、その場に座り込んだ。
朔が百鬼夜行から戻ると朝港町に向かい、朧の住む平屋の見える木陰から様子を見て朧の好きな食べ物を軒先に置いては戻るーーそれを繰り返す。
朧は小太郎やその仲間が来た時にしか戸を開けない。
その一瞬でしか朧の顔を見れる機会はなく、朝必ず小太郎が朧に会いに行くことを知っている雪男はじっと待っていた。
待っていると、小太郎が食料を手にやって来た。
「別嬪さん、変わりはないかい?」
「はい、大丈夫です。小太郎さん、毎日ありがとうございます」
「いや、いいってことよ。で、身体の具合は?」
「……身体の…具合?」
どこか悪いのだろうか?
妖は滅多に病を患うことはないが、朧は半妖ーー体調を崩してここに滞在せざるを得ないのであれば、それは一大事だ。
まだ悪夢を見ていて眠れずにいるのならば、どう手助けをしてやればいいのだろうか?
「大事な身体なんだから無理はするんじゃねえよ」
「…はい」
じゃあな、と言って去って行く小太郎。
雪男の胸がざわつく。
「大事な身体…?」
妙な言い回しだ。
ただ単に体調を崩しただけでそんな言い方をするだろうか?
ーーそっと平屋に近付いて軒先の下に立つと、懐から凍らないように厳重に包んだ紙を開いて庭に咲いている数本の桜色の秋桜と良い香りのする金木犀の花びらを足元に置いた。
朧がずっと世話をしてきた花に気付くだろうか。
一度戸に目をやった後その場を離れて去ると、見計らったように戸が開く。
朧もまた雪男が現れる時間帯を把握していて、出入り口に食べ物を置いて行くことを知っていた。
「わあ…花…」
確か屋敷に植えている秋桜や金木犀は今が見頃。
それを知らせてくれる雪男の優しさやあたたかさにどうしても寂しくなってしまう。
「こんなことしてくれる価値なんて私にはないのに」
粗末な花瓶に秋桜を飾り、包み紙に金木犀の花びらを包んで懐に入れた。
雪男に抱きしめられている気がして、その場に座り込んだ。

