主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

雪男が朧の居所を突き止めて幽玄町の屋敷に戻るとすぐさま朔に報告をして晴明が招集された。

平屋の近くの木に止まった鳥の姿をした式神の目を通してその光景が水晶玉に映る。

…粗末な建物だ。
朧の自室の半分にも満たない清潔でもない空間に独り、あの娘は暮らそうとしている。


「朧ちゃん…ひとりなの?小太郎さんて方は?」


「…一緒には暮らしてないみたいなんだ。どうしてなのか分からない」


息吹はひとまず安心したが、実は末娘を溺愛している十六夜はそうにもいかず表情を険しくして雪男に突っかかる。


「何故連れて帰って来ないんだ」


「無理強いするなって輝夜に言われてる。…輝夜」


「はい」


最近言葉少なな輝夜は、ぼんやりしていることが多くなった。
道を逸れた朧に責任を感じているのか、一度皆と水晶玉を覗き込んだ後は縁側に出てひとり座っていた。


「お前は朧が出て行った理由…知ってるのか?」


「……そうですね」


「それはやっぱり…言えないのか?」


「雪男、やめろ。輝夜を責めるのは御門違いだぞ」


庇ってくれる朔ににこりと笑いかけた輝夜は未来を明かすことは禁じられており、朧の好きな金平糖を口に入れて息をついた。


「それが理由で出て行ったとなれば、私の妹は愚か者としか言いようがありません」


「そんな言い方しなくてもいいだろ」


語気を強めて非難したが輝夜が堪えた様子はなく、金平糖の入った包みを雪男に差し出して、小雨の降る空を見上げた。


「これをあの子に。軒先に置いて行くといい。見つかったことには気付いているでしょうから家から出てくることはないでしょう」


「…掟を知ってるからか」


「そうです。主である兄さんが率先して入れば突入もできるでしょうが…兄さんはそうしないでしょう?」


「ああ。朧の真意を理解してやりたい。雪男、しばらくの間は様子を見に行ってくれ」


「ああ分かった」


「私はそろそろ焔を追い込んでここに戻らせるよう仕向けます。ただ単に迷子になっているだけかもしれませんしね」


正しい道へ皆を導く。