小太郎は多忙なため、常に朧の傍に居るわけにはいかない。
雪男が雪を降らせた時もどこかへ出かけていて、戻って来ると顔色の悪い朧を心配して目の前で胡座をかいて座った。
「どうしたい、気分悪いのか?つわりは?」
「つわりはまだありません。…小太郎さん…お願いがあります」
「あいよ、なんだい?」
「…しばらくの間この町に滞在しようと思います。宿屋じゃなくて家を借りたいんです。お金なら持ってます。できれば町から少し外れた場所の方が…」
「ちょ、待て待て待て!急にどうしたんだい?早く移動したいんじゃ…」
急に方針を変えた朧の心変わりに小太郎が驚いて早口でまくしたてる朧の肩に手を乗せた。
拳が白くなるほど握りしめて何かを堪えていた朧は、唇を噛み締めて蚊の鳴くような声で告白した。
「私の…私の愛しい方が…追ってきました」
「え!?そりゃ大変じゃないか!早く移動しよう!」
「いえ…見つかってしまった…。移動を続ければあなたの身にも危険が及びます。だけど私はあの人をやり過ごす方法を知っていますから大丈夫」
人の方から招き入れられない限りは家屋への侵入は御法度。
今腹の子が二ヶ月だとするならば、半年以上は最悪時を稼げる。
朔や雪男が小太郎に危害を加える可能性だってある。
それは闇落ちの原因にもなる最もやってはいけないことだ。
「…あんたはそれでいいのかい?腹に子がいることを知られるんだぜ?」
「…遠くへ逃げても必ず見つかります。私の考えが甘かったんです。小太郎さん、最後のお願いです。どうか家を一軒融通してもらえませんか」
ーーすでに朧に情が移ってしまっていた小太郎はため息をついて朧の頰をむにっと引っ張った。
「そんな難しい顔をせんでも用意はしてやるよ。…よし、俺もしばらく別嬪さんの傍に居よう。あ、一緒に住むってわけじゃねえから安心しな」
「でもお仕事が…あなたにも危険が…」
「心配すんなって、俺も腕っぷしには自信あるし部下だって居る。しかしあんた…どこまでも追って来られるほど愛されてるなら打ち明ければ受け入れてくれるかもだぜ?」
…それが嫌だから逃げている。
あの人は優しいから。
いっそのこと激しく拒絶してくれれば甘えたい思いなど捨て去れる。
「優しい人なんです。それが苦しい」
腹を撫でて、その子の父ではない男を想う。
雪男が雪を降らせた時もどこかへ出かけていて、戻って来ると顔色の悪い朧を心配して目の前で胡座をかいて座った。
「どうしたい、気分悪いのか?つわりは?」
「つわりはまだありません。…小太郎さん…お願いがあります」
「あいよ、なんだい?」
「…しばらくの間この町に滞在しようと思います。宿屋じゃなくて家を借りたいんです。お金なら持ってます。できれば町から少し外れた場所の方が…」
「ちょ、待て待て待て!急にどうしたんだい?早く移動したいんじゃ…」
急に方針を変えた朧の心変わりに小太郎が驚いて早口でまくしたてる朧の肩に手を乗せた。
拳が白くなるほど握りしめて何かを堪えていた朧は、唇を噛み締めて蚊の鳴くような声で告白した。
「私の…私の愛しい方が…追ってきました」
「え!?そりゃ大変じゃないか!早く移動しよう!」
「いえ…見つかってしまった…。移動を続ければあなたの身にも危険が及びます。だけど私はあの人をやり過ごす方法を知っていますから大丈夫」
人の方から招き入れられない限りは家屋への侵入は御法度。
今腹の子が二ヶ月だとするならば、半年以上は最悪時を稼げる。
朔や雪男が小太郎に危害を加える可能性だってある。
それは闇落ちの原因にもなる最もやってはいけないことだ。
「…あんたはそれでいいのかい?腹に子がいることを知られるんだぜ?」
「…遠くへ逃げても必ず見つかります。私の考えが甘かったんです。小太郎さん、最後のお願いです。どうか家を一軒融通してもらえませんか」
ーーすでに朧に情が移ってしまっていた小太郎はため息をついて朧の頰をむにっと引っ張った。
「そんな難しい顔をせんでも用意はしてやるよ。…よし、俺もしばらく別嬪さんの傍に居よう。あ、一緒に住むってわけじゃねえから安心しな」
「でもお仕事が…あなたにも危険が…」
「心配すんなって、俺も腕っぷしには自信あるし部下だって居る。しかしあんた…どこまでも追って来られるほど愛されてるなら打ち明ければ受け入れてくれるかもだぜ?」
…それが嫌だから逃げている。
あの人は優しいから。
いっそのこと激しく拒絶してくれれば甘えたい思いなど捨て去れる。
「優しい人なんです。それが苦しい」
腹を撫でて、その子の父ではない男を想う。

