百鬼夜行の主が日中から往来を歩くなど、ほとんど前例がない。
ましてや隣に青目青髪の美貌の男が居るとなると、黒目黒髪の目が潰れるほど絶世の美貌の男の正体がもはや何者なのか誰もが知っていた。
「あの方は…主さまか。おお、なんとお美しい…」
「主さま、あれは…朧のだ」
とある露店の軒先に飾られていた着物を雪男が指すと朔が歩き出し、人垣が割れて足が震えている店主の前に立った。
「あ、あの…何かご用で…」
「その着物はどうした?」
「へ、へえ、先日身なりの良いお嬢さんがこれを売って違う着物を買って行かれましたが…」
「どこへ行ったか知っているか」
「行商人の集まる方に…それ以降は知りません」
朔がにこっと笑って踵を返すと、雪男が見惚れている店主に金を握らせて朔にこそりと囁いた。
「やっぱり平安町を出てる。…隣町かも」
「昨晩百鬼が探ったはずだが…掟が災いしたな」
「でも完全に気配を断つなんてあいつできるのかな」
「朧は俺が次代の主にと思うほど素質はあった。父に仕込まれ、お前が開花させた。気配を断つ程度のことは容易だろう」
歩く先の人垣が割れて見世物状態ーーしかも通りは皆が息をするのも忘れてふたりに見惚れているので静まり返り、しかしなりふり構わないふたりは朧が隣町へ行ったと踏んで平安町の大きな門を潜って出ると空を駆けて飛び、先を急ぐ。
ーー夜も明けてなお妖が活動する場合、それは大抵大物の妖だと相場は決まっていた。
牛車で移動を開始していた朧がそれを察知してその気配を辿ると、それが兄と雪男のものであるとわかり、息を詰めて再び気配を断つ。
「別嬪さん、どうした?」
「…先を急いでください。できるだけ、早く…」
…追って来て欲しくなかった。
知られたくない。
もう放っておいてほしい。
例えあなたを愛していても、この罪は洗い流すことはできない。
「お師匠様…」
見つけないで。
こんなに罪深い私を。
ましてや隣に青目青髪の美貌の男が居るとなると、黒目黒髪の目が潰れるほど絶世の美貌の男の正体がもはや何者なのか誰もが知っていた。
「あの方は…主さまか。おお、なんとお美しい…」
「主さま、あれは…朧のだ」
とある露店の軒先に飾られていた着物を雪男が指すと朔が歩き出し、人垣が割れて足が震えている店主の前に立った。
「あ、あの…何かご用で…」
「その着物はどうした?」
「へ、へえ、先日身なりの良いお嬢さんがこれを売って違う着物を買って行かれましたが…」
「どこへ行ったか知っているか」
「行商人の集まる方に…それ以降は知りません」
朔がにこっと笑って踵を返すと、雪男が見惚れている店主に金を握らせて朔にこそりと囁いた。
「やっぱり平安町を出てる。…隣町かも」
「昨晩百鬼が探ったはずだが…掟が災いしたな」
「でも完全に気配を断つなんてあいつできるのかな」
「朧は俺が次代の主にと思うほど素質はあった。父に仕込まれ、お前が開花させた。気配を断つ程度のことは容易だろう」
歩く先の人垣が割れて見世物状態ーーしかも通りは皆が息をするのも忘れてふたりに見惚れているので静まり返り、しかしなりふり構わないふたりは朧が隣町へ行ったと踏んで平安町の大きな門を潜って出ると空を駆けて飛び、先を急ぐ。
ーー夜も明けてなお妖が活動する場合、それは大抵大物の妖だと相場は決まっていた。
牛車で移動を開始していた朧がそれを察知してその気配を辿ると、それが兄と雪男のものであるとわかり、息を詰めて再び気配を断つ。
「別嬪さん、どうした?」
「…先を急いでください。できるだけ、早く…」
…追って来て欲しくなかった。
知られたくない。
もう放っておいてほしい。
例えあなたを愛していても、この罪は洗い流すことはできない。
「お師匠様…」
見つけないで。
こんなに罪深い私を。

