朔と雪男が出かける準備をする中、輝夜は残って彼らを見送っていた。
ただ、いつも微笑を浮かべているその表情はどこか固く、それに気付いた朔は、輝夜を呼び寄せて頭の上に手を置いて言い聞かせた。
「輝夜、おかしなことは考えるなよ」
「兄さん…」
「お前は手立てを知っているかもしれないが、それを使えばお前自身に咎が及ぶことは知っている。お前ばかり犠牲になるな」
朔が懸命に止めてくれる優しい心をありがたく受け取った輝夜は目を閉じて微笑んだ。
「私は犠牲など払っていませんよ。兄さん…朧の道が逸れたんです。先が見えない。ですが、方法はあります」
「だからそれを使うなと言っているんだ。輝夜、傍に居ろ。もう何もするな。お前が居てくれればいい」
朔は輝夜の額に額をこつんとあてて目を閉じた。
この弟が自由という代償を支払って生きていること自体、朔にとっては何とかしてやりたいがどうにもできない歯がゆさを常に感じている。
「主さま、先に行くから」
「少し待て。…輝夜、朧は見つけてくるからお前はここに居ろ。いいな?」
「…はい、兄さん」
返事を聞いて安心した朔が雪男を伴って屋敷を出て行く。
輝夜は居間に戻り、父の十六夜と久方ぶりにちゃんと対面して息をついた。
「久々にお会いしたというのにこの有様…申し訳ありません」
「いや、いい。お前の責任じゃない。輝夜、朔の言った通りもうお前が力を使ってすべきことは済んでいる。朔たちを待て」
「…ふふ、珍しく饒舌ですね父様」
「どれだけ俺たちがお前を案じていると思っているんだ。…朧を救いにきてくれたことは感謝している。だから朧が見つかるまではここに居ろ」
無口な父からも説得を受けたがーー輝夜は返事をせず、庭に目をやった。
「妹が花に水やりをする姿はとても可愛いんです。それを見るまでは居ますよ」
できることは全てする。
犠牲を払って戻ってきてくれるならば、どんなことでもしよう。
「私はどうでもいいんです。あの子が戻ってきてくれれば」
それが、自分の救いにもなるのだから。
ただ、いつも微笑を浮かべているその表情はどこか固く、それに気付いた朔は、輝夜を呼び寄せて頭の上に手を置いて言い聞かせた。
「輝夜、おかしなことは考えるなよ」
「兄さん…」
「お前は手立てを知っているかもしれないが、それを使えばお前自身に咎が及ぶことは知っている。お前ばかり犠牲になるな」
朔が懸命に止めてくれる優しい心をありがたく受け取った輝夜は目を閉じて微笑んだ。
「私は犠牲など払っていませんよ。兄さん…朧の道が逸れたんです。先が見えない。ですが、方法はあります」
「だからそれを使うなと言っているんだ。輝夜、傍に居ろ。もう何もするな。お前が居てくれればいい」
朔は輝夜の額に額をこつんとあてて目を閉じた。
この弟が自由という代償を支払って生きていること自体、朔にとっては何とかしてやりたいがどうにもできない歯がゆさを常に感じている。
「主さま、先に行くから」
「少し待て。…輝夜、朧は見つけてくるからお前はここに居ろ。いいな?」
「…はい、兄さん」
返事を聞いて安心した朔が雪男を伴って屋敷を出て行く。
輝夜は居間に戻り、父の十六夜と久方ぶりにちゃんと対面して息をついた。
「久々にお会いしたというのにこの有様…申し訳ありません」
「いや、いい。お前の責任じゃない。輝夜、朔の言った通りもうお前が力を使ってすべきことは済んでいる。朔たちを待て」
「…ふふ、珍しく饒舌ですね父様」
「どれだけ俺たちがお前を案じていると思っているんだ。…朧を救いにきてくれたことは感謝している。だから朧が見つかるまではここに居ろ」
無口な父からも説得を受けたがーー輝夜は返事をせず、庭に目をやった。
「妹が花に水やりをする姿はとても可愛いんです。それを見るまでは居ますよ」
できることは全てする。
犠牲を払って戻ってきてくれるならば、どんなことでもしよう。
「私はどうでもいいんです。あの子が戻ってきてくれれば」
それが、自分の救いにもなるのだから。

