朧は朔たちの予想以上に知恵が回る行動を取っていた。
一番地味な薄い黄色の着物を着て、心の中で謝りながら当面の金を巾着に入れて散歩に行くと言って屋敷を出る。
まず幽玄橋を渡って赤鬼たちに晴明に会いに行くと言って騙して通り、繁華街に出るとそれでも自分の着物は上等なものだと気付いて店に売り払い、もっと地味な淡い草色の着物に着替え、さらに化粧を落として笠を目深に被った。
念には念を入れて、顔に薄く泥も塗った。
夜分は妖が出没するため人々は日中牛車や荷車を引いて移動する。
徒党を組んで移動すれば危険も減るのでそのための乗り合い場所があり、朧は一番気っ風のよさそうな若い男に声をかけた。
「隣町まで乗せてもらえませんか?」
「え?あんたまさかひとり旅かい?こんな別嬪さんが…色々危ないぜ?」
「こう見えて腕には自信があるんです。お願いします」
にこっと愛想よく笑えば大抵の男は鼻の下を伸ばして言うことを聞いてくれることも知っていた。
…普段はこんなことはしないが、今はとにかくいち早く平安町から脱出しなければ。
「いいぜ乗りな。隣町までは牛車で夜には着く。あんた宿のあてはあるのかい?」
「それがまだなんです」
「隣町には知り合いが居るんだ。あんたひとり増えた位どうってことないだろう、話をつけてやるよ」
この男に声をかけたのは正解だった。
朧は巾着から言われた額を出して牛車に乗った。
足取りはどうしても慎重になり、腹も無意識に庇ってしまう。
…焔との子をひとりで育てるにはかなりの覚悟が要ったが、こればかりは芽生えた命に罪はない。
「罪があるのは、私…」
雪男と夫婦になって、雪男との間にできた子ではない子を一緒に育てたいだなんて虫が良すぎる。
家名にも傷をつけ、あっと言う間にあることないこと噂が立つだろう。
朔や輝夜、そして父母には本当に申し訳ないと思っていたが、この宿った命は家との縁を切ってひとりで育てるともう決めた。
「大丈夫だよ。大丈夫…」
腹の子に呼びかける。
まるで自分自身に言い聞かせるように。
一番地味な薄い黄色の着物を着て、心の中で謝りながら当面の金を巾着に入れて散歩に行くと言って屋敷を出る。
まず幽玄橋を渡って赤鬼たちに晴明に会いに行くと言って騙して通り、繁華街に出るとそれでも自分の着物は上等なものだと気付いて店に売り払い、もっと地味な淡い草色の着物に着替え、さらに化粧を落として笠を目深に被った。
念には念を入れて、顔に薄く泥も塗った。
夜分は妖が出没するため人々は日中牛車や荷車を引いて移動する。
徒党を組んで移動すれば危険も減るのでそのための乗り合い場所があり、朧は一番気っ風のよさそうな若い男に声をかけた。
「隣町まで乗せてもらえませんか?」
「え?あんたまさかひとり旅かい?こんな別嬪さんが…色々危ないぜ?」
「こう見えて腕には自信があるんです。お願いします」
にこっと愛想よく笑えば大抵の男は鼻の下を伸ばして言うことを聞いてくれることも知っていた。
…普段はこんなことはしないが、今はとにかくいち早く平安町から脱出しなければ。
「いいぜ乗りな。隣町までは牛車で夜には着く。あんた宿のあてはあるのかい?」
「それがまだなんです」
「隣町には知り合いが居るんだ。あんたひとり増えた位どうってことないだろう、話をつけてやるよ」
この男に声をかけたのは正解だった。
朧は巾着から言われた額を出して牛車に乗った。
足取りはどうしても慎重になり、腹も無意識に庇ってしまう。
…焔との子をひとりで育てるにはかなりの覚悟が要ったが、こればかりは芽生えた命に罪はない。
「罪があるのは、私…」
雪男と夫婦になって、雪男との間にできた子ではない子を一緒に育てたいだなんて虫が良すぎる。
家名にも傷をつけ、あっと言う間にあることないこと噂が立つだろう。
朔や輝夜、そして父母には本当に申し訳ないと思っていたが、この宿った命は家との縁を切ってひとりで育てるともう決めた。
「大丈夫だよ。大丈夫…」
腹の子に呼びかける。
まるで自分自身に言い聞かせるように。

