主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

陽が暮れても朧が戻って来ないーー


屋敷は騒然となり、百鬼夜行は一時中止となって皆が朧の捜索にあたる。

最も動揺していたのは雪男で、朧の小さな異変に気付いていながらそれを見逃したことを激しく悔いていた。


「あいつ、なんか様子が変だった…!俺、気付いてたのに…っ」


「とりあえず落ち着け。遠くには行ってないはずだ。百鬼は幽玄町をくまなく捜せ。雪男、お前は橋まで行って朧が平安町に向かっていないか青鬼と赤鬼に聞いて来い」


頷く間も無く雪男が屋敷から出て幽玄橋へ向かう。

輝夜は朔に頭を下げて朧が行方不明になった責任を感じて唇を噛みしめる。


「兄さん申し訳ありません。こうなることは予想もつかず…」


「お前は力に頼りすぎだ。今目の前にあるものをよく見て動け。…これは誰の責任でもない。朧が連れ去られたのでなければ、朧自身が決めて出て行ったんだろう。まずはそれを調べよう」


頰をぴたぴたと叩かれて気を持ち直した輝夜は、騒然としている屋敷を見回してどう動こうかと考えていた。


「輝夜…朔」


「父様…」


ーー百鬼が町中を捜索しているためとうとう父の耳に入ることとなり、息吹と十六夜が険しい表情で乗り込んで来た。


朔と輝夜は妹の凶事に強く目を閉じて深く頭を下げた。


「父様…申し訳ありません」


「…何が起きたか経緯を話せ。なるべく詳しく。俺も協力する」


「私が帰る時朧ちゃんなんだか変だったの。あの子どこへ行ったの…!?」


「…説明は私が。兄さんは引き続き指揮を」


「わかった」


ーーその頃雪男は幽玄橋に着き、橋の中心で微動だにしない山のように大きな赤鬼と青鬼の前まで来て叫んだ。


「お前たち!朧を見てないか?!」


幽玄町が騒がしいことは知っていたが彼らには任務があり、橋から一歩も動いていない。

二匹は顔を見合わせて、小さくて可愛い息吹の娘がこの橋を通って行ったことを雪男に告げた。


「はい、確か晴明に会いに行くと…」


「!そうか、分かった!」


駆ける。

夜も更けて人ひとり居ない平安町を駆ける。

あの娘は本当に晴明の元へ行ったのだろうか?

そうであれば良いと思ったがーー何故かそれはないだろう、と打ち消しながら必死に晴明の元へ向かった。