主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

白兎は朝になるまで客間でぼーっとしていて、雪男は三人の輪に入らずふてくされながら縁側に寝転んでいた。

そうこうするうちに朔と銀が戻ってきて、ひとりぼっちの雪男を見てふっと笑った。


「家族水入らずの時を過ごしたようだな」


「そうですね!俺は家族じゃないですからね!」


欠伸をした銀が朔の肩を叩いて屋根の上に上がって寝転ぶと、息吹が起きてきた。


「お帰りなさい。ご飯作るから寝る前に一緒に食べよ」


「母様、朧と輝夜は?」


「まだ寝てるよ。雪ちゃん、朧ちゃんのこと待ってあげてね」


腕まくりをして台所に立つ息吹が昨晩どんな話を三人でしていたのか容易に想像できる。

だからこそ、何の反論もせず雪男は頷いて、かつて一番大切だった女に笑顔を向けた。


「ああ、待つよ。それしかできねえし」


「ううん、雪ちゃんが傍に居てくれると朧ちゃんも勇気出ると思うから」


野菜を切る子気味良い音が部屋に響く。

朔は縁側で腕を組んで目を閉じながら笑み、雪男はそんな朔の隣で朔の肘を突いた。


「主さま聞いたか今の!」


「ちなみにさっきお前が自分は家族じゃないと言ったが、俺たち兄弟姉妹は皆お前に教育され、見守られて育った。最初から家族以外の何者でもない。…聞いたか今の」


逆に切り返されて、内容に胸が熱くなってにやりと笑っている朔に感謝を述べようとした時、朧と輝夜が起きてきた。


「おはようございます。兄様お帰りなさい」


「うんただいま。顔を洗っておいで。一緒に食べよう」


返事をして洗面所に向かい、洗顔と厠を済ませた。


ーーその時、心の中で何かが引っかかっていた。


…何かを忘れている気がしてならない。

だがそれが何だか思い出せない。


「…まあいっか…」


それはとてもとても、大切なことだった。