主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

厄介なものに好かれてしまった…


隣で早めの夕餉を食べている様をじっと見ている白兎の視線が痛い。

雪男の知り合いなので強く拒絶できないし、つい先日まで雪男に熱を上げ、氷麗に差し向けられてここへ来たはずだが…


「兄さん、鬱陶しいなら代わりますよ」


「何を代わるつもりだ。…白兎」


「!はい!」


「…」

名を呼ばれて威勢よく返事をしたもののやはり朔と視線を合わせることができず頬を赤らめる。


「あの…主さま…ほんとごめん…」


机を挟んで向かい合って座っていた雪男が何故か謝り、輝夜はきょとんとしている息吹の隣でため息。


「ああ私の兄さんが。好敵手が増えてしまいました」


「かぐちゃんお兄ちゃんのこと大好きだもんね。いたずらしてない?」


「ええ今の所はね」


「今の所ってなんだ。…準備してくる。ごちそうさまでした」


礼儀よく手を合わせて席を立った朔に名残惜しそうな視線を向けた白兎は、思わずにんまりしてしまった雪男を睨んだ。


「な、なんですの?!」


「んや、別にー。息吹、今日は泊まっていけるのか?」


「うんそうだね、朧ちゃんとも話したいし泊まってこっかな?」


「母様!私と一緒に寝て下さい!」


「では私も」


「かぐちゃんも?いいよいいよ、みんなで寝よっ」


「じゃあ俺も…」


「雪ちゃんは駄目っ。こっちが凍って死んじゃう!」


軽口を叩けるほど進展したのかーー密かにそれを喜びつつ、息吹は隣の輝夜の手を握る。


「鬼灯はどう?赤くなった?」


「ええ少しだけ。まだまだ道のりは長いですよ」


「私がちゃんと産んであげられなくてごめんね…。早産だったし、かぐちゃんのこと本当に心配だからいつでも帰って来ていいんだよ?」


輝夜は慈悲深い息吹の愛情に触れてはにかみ、手を握り返した。


「妹の件が解決すればまた発つでしょう。それまではここに居ますよ」


件の問題はそろそろ解決するはずだ。
そうなればまた、声無き声をあげる者を救いに行く旅に出なければならない。


「ふふふ、今夜は川の字で寝れるわけですね?というわけで兄さん、今夜は私は留守番をしますよ」


「ああ、心ゆくまで母様たちと話をするといい」


準備が整って部屋から出て来た朔が笑む。

月夜にその笑みが映え、白兎をぞくりとさせた。