白兎はその日、あまりにも生々しくかつ荘厳で美しい光景を目撃していた。
朔は百鬼夜行の主として先頭を行き、脇を銀が固める。
双方共に刀を振るう度に群れて襲ってくる敵を屠り、返り血を頰に浴びた朔の笑みを履く横顔は背筋が震えるほど美しく、故郷で氷麗から“主さまの傍に居ては魂を奪われてしまう”と警告された意味を身を以て実感していた。
「美しいでしょう、兄さんは」
「は、い…。恐ろしい…」
白兎を背に乗せたがらない猫又を何とか説き伏せて乗らせると先頭から少し離れた所に居た輝夜の元にも敵は容赦なくやって来て、笑みを絶やさない輝夜の太刀に吸い込まれるようにしてその命を捧げる。
鬼灯と呼ばれる輝夜の男とも女とも見紛う容姿も相成り、美しい者は強いーーそれがしかも三人も居る…敵の戦意は否が応でも下がる。
雪男は彼らを統率して導く朔の腹心の友であり、崇拝される存在でもあるが…現実に朔が戦う様を見てしまうと陶酔して雪男への恋心はおざなりになってしまっていた。
「半妖なのになんてお美しい…」
「我らは半妖ですが、父母の良い面しか受け継いでいませんからね」
隣に居る銀は九尾ーー他者に従うような弱き者ではなく、矜持が高く人を欺くことに長けた大妖。
そんな者が朔の盾となり鉾となって戦っている自体異例のこと。
「お兄様はこんな激しい戦いに身を投じてらっしゃるのですか…?」
「正確には彼は屋敷の留守役です。兄さんが百鬼夜行に出ている間本丸を襲われては意味がありませんからね」
「お一人で…?」
「山姫も居ますが雪男の方が圧倒的に戦闘に長けています。…娘さん、彼を故郷に戻したいのであれば、兄さんと戦う他ありませんよ。女だからといって手加減するような事もありませんからご注意を」
また身震いが襲って来た。
あんな恐ろしくて美しい生き物と戦う姿を想像できず、ただただ震えていた。
朔は百鬼夜行の主として先頭を行き、脇を銀が固める。
双方共に刀を振るう度に群れて襲ってくる敵を屠り、返り血を頰に浴びた朔の笑みを履く横顔は背筋が震えるほど美しく、故郷で氷麗から“主さまの傍に居ては魂を奪われてしまう”と警告された意味を身を以て実感していた。
「美しいでしょう、兄さんは」
「は、い…。恐ろしい…」
白兎を背に乗せたがらない猫又を何とか説き伏せて乗らせると先頭から少し離れた所に居た輝夜の元にも敵は容赦なくやって来て、笑みを絶やさない輝夜の太刀に吸い込まれるようにしてその命を捧げる。
鬼灯と呼ばれる輝夜の男とも女とも見紛う容姿も相成り、美しい者は強いーーそれがしかも三人も居る…敵の戦意は否が応でも下がる。
雪男は彼らを統率して導く朔の腹心の友であり、崇拝される存在でもあるが…現実に朔が戦う様を見てしまうと陶酔して雪男への恋心はおざなりになってしまっていた。
「半妖なのになんてお美しい…」
「我らは半妖ですが、父母の良い面しか受け継いでいませんからね」
隣に居る銀は九尾ーー他者に従うような弱き者ではなく、矜持が高く人を欺くことに長けた大妖。
そんな者が朔の盾となり鉾となって戦っている自体異例のこと。
「お兄様はこんな激しい戦いに身を投じてらっしゃるのですか…?」
「正確には彼は屋敷の留守役です。兄さんが百鬼夜行に出ている間本丸を襲われては意味がありませんからね」
「お一人で…?」
「山姫も居ますが雪男の方が圧倒的に戦闘に長けています。…娘さん、彼を故郷に戻したいのであれば、兄さんと戦う他ありませんよ。女だからといって手加減するような事もありませんからご注意を」
また身震いが襲って来た。
あんな恐ろしくて美しい生き物と戦う姿を想像できず、ただただ震えていた。

