主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

我ながらうまく白兎を追い払ったと思う。
雪男は後ろ髪を引かれながら百鬼夜行に出た白兎を笑顔で見送った。

朧が風呂に入っている間、どう攻めてやろうかと考える。

好きな男など居ないのは間違いないし、かと言って自分の想いを断った理由は分からない。

だが時折見せる態度や表情は、自惚れでなければ…こちらに好意があるのでは、と思う。


「女心って、分かんねえな…」


「私には男心が分かりません」


振り返ると、濡れた髪を拭きながら風呂上がりで頰が上気した朧が白い浴衣を着て立っていた。

まだ薄い生地の浴衣の胸元がやけに目に入って目を泳がせる。

朧は意を決して自ら突っ込まなかった白兎の話題を口にした。


「白兎さんは本当に可愛いから故郷では引く手数多なんじゃ?」


「見てくれに騙されると酷い目に遭うぞ。俺はあいつの被害者を大勢知ってるからな」


正直白兎の話など興味がなく、雪男は何故その話題を選んだのか酒を飲みながら問うた。


「白兎がどうした?なんかされたか?」


「あ、いえ…私が気になっただけで…」


…これはやきもちを妬かれているのか…判断がつかなかったが、暑がって手をぱたぱたさせている朧の顔を団扇で扇いでやりながら、にやりと笑う。


「なんだよ、俺と白兎のことが気になるのか?」


「…そうですね…そうなのかも」


予想していなかった答えに雪男の真っ青な目が朧を見つめる。

ますます暑くなった朧が雪男と目を合わせることができずに庭を眺めているふりをしていると、雪男がとても小さな声で呟いた。


「…くそ、触りてえな…」


「…え?今なにか言いました?」


「ん、いいや別に。髪梳かしてやるよ」


輝夜から貰った櫛を朧が手渡すと、対面する形で腕を伸ばした雪男が丁寧に胸に垂れた髪を梳かす。

朧の視界からは雪男の胸元から喉、少し開いた唇から透き通るように青い目ーー撫でるように見つめてしまう。


「…なんだよその顔。誘ってんのか?」


何かを堪えるような顔をして唇を噛みしめる朧の態度からはやはり、嫌われてはいないーーいや、むしろ…


「…っ!」


「朧…」


気がつくと、腕の中に抱きしめていた。