畳に爪を立てながら這い、縁側に出た息吹は、ふたつの丸くて白く発光するものを目を見開いて見ていた。
十六夜は身体を硬くして異質なその光を注視しつつ息吹の前に出て庇う。
「お前の声が天に響いた」
低くて透き通るような男の声。
少しずつ光が縮小していくとその全体が現れる。
その姿ーー
金の髪に、垂れた碧い瞳ーーこの世のものとは思えないほど美しい美貌に、触れてはいけないと思わせる神聖な光に包まれた男。
そしてもう片方は、朱く長い髪に気が強そうな吊った朱い瞳ーー腰に手をあてて静かに息吹を見つめていた。
ふたりともどのような格好をしているのか発光のせいで見えなかったが、人智を超える生き物だと分かる。
「お前たちは…何者だ」
「俺たちは神の鳥と呼ばれている。世界を創造し、世の理を統べる唯一の神の使いだ」
「神…だと…?」
「我らが神は等しくお前たちを創り、等しく愛して慈しんでいる。その娘の声が神の元に届いた。助けに来たぞ」
「使者様…!赤ちゃんを、助けてくれるの…?!」
目尻を下げた男の方が息吹に近寄ると、絶対的な強さを持つはずの十六夜の身体が勝手に避けて通してしまった。
「お前は動くな」
女の方が少しかすれた艶っぽい声で制止すると、十六夜はそれでも何とか身体を動かして涙を流して苦しむ息吹の肩を抱いて離さなかった。
「何をする気だ…!?」
「お前は先程言ったな。自分の命と引き換えでもいい、と」
「…!助けてくれるの…!?構いません、この子を助けて…!」
「駄目だそれは許さない!お前たち、そんな引き換えを要求しに来たのか!?ならば立ち去れ!」
ふたりが顔を見合わせる。
女の方が呆れたように吐き捨てた。
「状況を読め」
「ふふ、すまない、妙なことを尋ねたな。…では改めて問う。その赤子の命を救いたいか」
「はい…!お願いします、助けて…」
「救うことはできる。だがその代わり、その赤子にはひとつ枷がかけられることになる」
「枷…?」
その言葉の重たい響きに十六夜も息吹も固唾を飲んで男を見つめた。
「ひとつ何か決定的なものに欠けたまま、この子は産まれてくるだろう。それでも良いというならば、助けてやれる」
ーー何かひとつ決定的に欠けたままーー
とてもとても、恐ろしい響きを伴っていた。
十六夜は身体を硬くして異質なその光を注視しつつ息吹の前に出て庇う。
「お前の声が天に響いた」
低くて透き通るような男の声。
少しずつ光が縮小していくとその全体が現れる。
その姿ーー
金の髪に、垂れた碧い瞳ーーこの世のものとは思えないほど美しい美貌に、触れてはいけないと思わせる神聖な光に包まれた男。
そしてもう片方は、朱く長い髪に気が強そうな吊った朱い瞳ーー腰に手をあてて静かに息吹を見つめていた。
ふたりともどのような格好をしているのか発光のせいで見えなかったが、人智を超える生き物だと分かる。
「お前たちは…何者だ」
「俺たちは神の鳥と呼ばれている。世界を創造し、世の理を統べる唯一の神の使いだ」
「神…だと…?」
「我らが神は等しくお前たちを創り、等しく愛して慈しんでいる。その娘の声が神の元に届いた。助けに来たぞ」
「使者様…!赤ちゃんを、助けてくれるの…?!」
目尻を下げた男の方が息吹に近寄ると、絶対的な強さを持つはずの十六夜の身体が勝手に避けて通してしまった。
「お前は動くな」
女の方が少しかすれた艶っぽい声で制止すると、十六夜はそれでも何とか身体を動かして涙を流して苦しむ息吹の肩を抱いて離さなかった。
「何をする気だ…!?」
「お前は先程言ったな。自分の命と引き換えでもいい、と」
「…!助けてくれるの…!?構いません、この子を助けて…!」
「駄目だそれは許さない!お前たち、そんな引き換えを要求しに来たのか!?ならば立ち去れ!」
ふたりが顔を見合わせる。
女の方が呆れたように吐き捨てた。
「状況を読め」
「ふふ、すまない、妙なことを尋ねたな。…では改めて問う。その赤子の命を救いたいか」
「はい…!お願いします、助けて…」
「救うことはできる。だがその代わり、その赤子にはひとつ枷がかけられることになる」
「枷…?」
その言葉の重たい響きに十六夜も息吹も固唾を飲んで男を見つめた。
「ひとつ何か決定的なものに欠けたまま、この子は産まれてくるだろう。それでも良いというならば、助けてやれる」
ーー何かひとつ決定的に欠けたままーー
とてもとても、恐ろしい響きを伴っていた。

