主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

花冠を頭に乗せたまま朧の部屋を訪ねた輝夜は、部屋の片隅で顔面蒼白になっている朧を見つけると、声をかけることなく隣に座った。

妹がたいへん苦しい想いを抱いていることはとても心苦しく、朔の発破が功を奏しているのは見て取れたがーー


輝夜の黒瞳がわずかにじわりと金色に輝き、朧を撫でるように見つめた。

俯く顔は悲嘆に暮れ、朧自身が発してい生命の源のような光は歪み、輝夜が危機を覚えるほどの儚さに言葉が詰まった。


ーー様々な“予測”が輝夜の脳裏を駆け巡っていく。

本来辿る未来ーー

そこに至らず破綻して自ら命を絶つ未来ーー

長い時を経て生まれ変わった後にようやく訪れる本来の未来。

今の朧は限りなく後者に近く、このまま朔の言うように嫁に出せばその命は自ら絶たれてしまうだろうと輝夜に思わせた。


「……」


朧が膝を抱えて黙ったまま、隣の輝夜の手を握ってきた。

その少し冷たい手を握り返すと、白い頰につっと涙が伝った。


「朧…」


「私は…幸せにはなれないんです。好きな方に嫁げず、知らない方の元で長い時を過ごすなんて…いや…」


「…」


「兄様には見えているんですよね?私は…幸せですか…?」


縋るような目で涙を零しながら問うてくる朧のあまりのか弱さに輝夜は引き寄せて抱きしめると、悲しい未来しか想像できなくなってさらに発する光が弱くなる朧に静かに話しかけた。


「お前は幸せにならなければ。そのために私が帰って来たのだから」


「兄様…」


「私は私のことを語らないようにしていますが、お前の手助けになるかもしれない。聞いてもらえますか?」


「…はい…」


輝夜は着物の袖で朧の涙を拭うと片手で口もとを覆い、その手をゆっくり開くとーーそこには輝夜が突然現れた時に持っていた鬼灯が乗せられていた。


「鬼灯…」


「私の出生から今までのこと、かいつまんで教えて差し上げましょう」


悲しい未来などない、ということを。