主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

何度も口を開いては閉じ、その繰り返しで言葉が紡げない。


嫁に行くのか?
いつ?
誰の元へ?
もう会えなくなる…?


ここ数日でぐっと距離が縮まったと思っていたのにこれだ。

朧は朔から話を聞いた後部屋に閉じこもってしまった。
逆に白兎はご満悦で鼻歌も飛び出す始末ーー雪男を大いに苛立たせていた。


「兄さんの発破は効果がありますかねえ」


「さあな。だが朧が雪男以外に嫁ぐ選択肢は俺にはない。あれとは縁を結んでおきたいからな」


「私たちにとって雪男は第二の父であり兄であり……まあつまり家族同然ですからね。そこは支持します」


恐らく何もかも見通しているであろう輝夜から未来の話を尋ねることはできない。

だが雪男と朧の仲を支持していることは間違いなく、いらいらしながら池の鯉にぶつけるように餌をやっている雪男を見て輝夜が苦笑した。


「あの娘さんが大人しく帰ってくれればいいですけど、まあそれもありませんね」


摘んで来た花を縁側に座って器用に編み込んでは花冠を作った輝夜がそれをまだ文に囲まれている朔の頭に乗せる。


「夜這いをするとでも?」


「嫉妬心が強いという点では鬼族にも引けを取らないですから。雪男と朧が親しげにしている姿を見続ければどうなることやら」


そしてはっとしたように手を叩くと妙案だと言わんばかりに朔に向けて身を乗り出した。


「私があの娘さんに気があるように仕向けて矛先を変えて…」


「いや、それでお前本気になられたらどうする。根無し草の身なのに」


呆れた朔が花冠を輝夜の頭に乗せると、輝夜はそのまま立ち上がって肩を竦めた。


「兄さんは駄目ですよ。あなたにはもっと相応しい女が待っていますから」


「ははっ、そうか…早く出会いたいものだな」


「では私は朧の様子を見て来ます。兄さんは雪男を頼みましたよ」


「分かった」


役割分担をして別れると、朔は池の前でぼんやりしている雪男の様子を見に腰を上げた。