主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

妖は基本的に夜活動しているので朝に寝る者が多い。

なので白兎も朝まで起きていて、ふたりが良い雰囲気にならないように見張っていた。

…双方共に気があるのは見ていて分かる。
だがーーどうやら何かしらの理由があるのか突っぱねているのは朧のようだ。


「主さまお帰り」


雪男が百鬼夜行から戻ってきた朔たちを労っていた時に好機が訪れた。

朧がひとりになり、ふたりきりでまだ話したことのない白兎はここぞとばかりに縁側に居た朧の隣に座った。


「あなたのお兄様方は稀有な存在ですわね」


「え?そう…ですか?」


「あんなにお美しいご兄弟がいらしたらお嫁にも行き遅れるのは当然ですわ」


「…」


朧が黙る。

鬼族は早めに所帯を持つことが多く、暗に嫁に行かない理由があるのだろうと尋ねてきた白兎の真っ青な目をじっと見つめた。

朧も漏れなく美しく、さらに歳を重ねれば誰をも唸らせる美女となることは間違いない。
白兎も負けじと睨むように見つめ、朧がふわっと笑ったところで緊張が解けた。


「そうですね、兄様たち位に強くて美しい方でないと嫌です」


「…例えていうと、誰かしら?」


「…お師匠様なんか捨てがたいですね」


ーー勝負に出た朧に白兎はじり、と距離を詰めてにじり寄り、声を落とした。


「あなたは半妖。お兄様は同族と夫婦になって強い血を残す定めにありますのよ」


「…例えただけですから、むきにならないで下さい。ですが私は半妖であることを恥じてはいません」


父と母が苦悩しつつもその手を離さなかった恋ーーその末に生まれたことは誇りでもあるから。


「…」


「……」


ふたりが黙り込んでいると、朔が輝夜と雪男を伴って朧の頭を撫でた。

白兎は目の前の圧倒的な存在感に息をすることもできず目を逸らすこともできず固まっていた。


「ただいま」


「兄様お帰りなさい。お怪我は?」


「そんなものないよ。道中、秘泉を見つけて汲んできたよ。飲んでみて」


…妹の前では砕けた口調になり、くしゃりと笑う朔の虜になりかけた白兎が首を振り、朧は竹筒を受け取って頭を下げた。


「兄様ありがとう」


「一緒に朝餉を食べたら少し眠るといい。輝夜、頼んだ」


「はい」


麗しき兄弟の絆。

雪男は白兎の動転した様子に笑みを噛み殺していた。