百鬼夜行を見送り、夕餉を食べている朧の傍には必ず雪男が居る。
朧の一挙手一投足を見守り、片付けも手伝い、側から見ていると夫婦同然の様に白兎は歯噛みしていた。
「お兄様、少々構いすぎではありませんの?」
「いやあいつ今病み上がりだし。目を離すのはちょっとな」
皿を洗い、手を拭いてひと段落ついた朧が居間の大きな机に紙と筆を用意したのを見た雪男は白兎との会話を切り上げて朧の隣に座った。
「文なんて珍しいな」
「一番上の姉様から文を頂いたんです。そのお返事を」
ぎくっとなった雪男の表情に朧がふっと笑って目を伏せた。
「お師匠様は姉様が苦手でしたね」
「いやだってあいつってさ、先代を女にしたような奴だろ。早々に嫁入りが決まっていじめられてた俺としてはほっとしたし」
「ふふ、近況を知りたいそうです。お師匠様のことも書いておきますね」
…話の内容はよく分からないがふたりが良い雰囲気になっていたのに気付いた白兎は、さっと雪男に近付いて腕を引っ張る。
「お兄様、邪魔をしてはいけませんわ。ねえ、私お風呂を頂きたいのですけど」
「あー、案内するよ」
「一緒に入りましょうよ」
朧の筆が止まり、雪男も同じように止まって愛想笑いを浮かべた。
「いやそれは勘弁な。俺はここに居るし場所だけ案内するから」
「あの頃との私は違いますのよ。育つところはちゃんと育って…」
「はいはいっ、分かったからこっちにどうぞ!」
焦りまくる雪男に文句を言いつつ白兎とふたり風呂場に向かい、書く気が失せて筆を置いた朧は庭に出て月夜を眺めた。
雪男の許嫁ーー雪男自身は反故になったと言ったが白兎との見解は違うようだ。
「…早く帰ってほしいな…」
つい本音が漏れて足元に落ちた花を拾って眺めていると、視界に雪男の足が入った。
「早く帰らすよ」
「お師匠様…」
「煩わしいし、かしましいだろ?俺は…お前に早く治ってもらいたいからさ」
「…ご迷惑をおかけしてすみません」
「いや全然この位。あ、お前の姉さんには雪男はとてもよくしてくれます、って文に書いとけよな」
橙の花を朧の手から取って耳の上に挿してやった雪男が笑う。
不安はそんな些細なことで吹き飛んだ。
朧の一挙手一投足を見守り、片付けも手伝い、側から見ていると夫婦同然の様に白兎は歯噛みしていた。
「お兄様、少々構いすぎではありませんの?」
「いやあいつ今病み上がりだし。目を離すのはちょっとな」
皿を洗い、手を拭いてひと段落ついた朧が居間の大きな机に紙と筆を用意したのを見た雪男は白兎との会話を切り上げて朧の隣に座った。
「文なんて珍しいな」
「一番上の姉様から文を頂いたんです。そのお返事を」
ぎくっとなった雪男の表情に朧がふっと笑って目を伏せた。
「お師匠様は姉様が苦手でしたね」
「いやだってあいつってさ、先代を女にしたような奴だろ。早々に嫁入りが決まっていじめられてた俺としてはほっとしたし」
「ふふ、近況を知りたいそうです。お師匠様のことも書いておきますね」
…話の内容はよく分からないがふたりが良い雰囲気になっていたのに気付いた白兎は、さっと雪男に近付いて腕を引っ張る。
「お兄様、邪魔をしてはいけませんわ。ねえ、私お風呂を頂きたいのですけど」
「あー、案内するよ」
「一緒に入りましょうよ」
朧の筆が止まり、雪男も同じように止まって愛想笑いを浮かべた。
「いやそれは勘弁な。俺はここに居るし場所だけ案内するから」
「あの頃との私は違いますのよ。育つところはちゃんと育って…」
「はいはいっ、分かったからこっちにどうぞ!」
焦りまくる雪男に文句を言いつつ白兎とふたり風呂場に向かい、書く気が失せて筆を置いた朧は庭に出て月夜を眺めた。
雪男の許嫁ーー雪男自身は反故になったと言ったが白兎との見解は違うようだ。
「…早く帰ってほしいな…」
つい本音が漏れて足元に落ちた花を拾って眺めていると、視界に雪男の足が入った。
「早く帰らすよ」
「お師匠様…」
「煩わしいし、かしましいだろ?俺は…お前に早く治ってもらいたいからさ」
「…ご迷惑をおかけしてすみません」
「いや全然この位。あ、お前の姉さんには雪男はとてもよくしてくれます、って文に書いとけよな」
橙の花を朧の手から取って耳の上に挿してやった雪男が笑う。
不安はそんな些細なことで吹き飛んだ。

