「お兄様!」
門を潜るなり玄関から甲高い女の声が聞こえた。
朧は立ち止まり、雪男は柔和な笑みで近付いてくる声を待ち受ける。
「白兎(しろ)か、大きくなったなあ」
「お兄様…!お会いしたかった!」
見えた人影はーー淡い水色の着物と桃色の帯を身につけ、真っ青な長い髪に真っ青な垂れた目、雪のように白い肌のどこからどう見ても美少女が、雪男の腕の中に飛び込む。
「…っ、お師匠様…」
「ああ、こいつ同郷の子。すげえちっさかったのにちゃんと育つもんだなあ」
「そうですわよ、私、お兄様にお会いしたくて氷麗様にお願いして飛び出して来ましたの!」
「母さんに?なんで?」
…雪男はぼんやりしているが、朧はすぐにぴんときた。
この娘は恋敵。
氷麗が雪男とこの娘を夫婦にさせるために送り込んできたのだろう。
白兎はそこでじっと見つめたまま黙っている朧に気付くと雪男から離れて深々と頭を下げた。
「ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。私は白兎と申します。お兄様の許嫁でございます」
「…!」
言葉もなく衝撃を受けている朧を見て慌てた雪男が前に立ち塞がってふたりに早口で説明をした。
「それは俺が故郷を出る前の話だし、反故になってる!こいつは俺の妹みたいなもん!わかったか?」
あまりの慌てように白兎がすっと目を細め、雪男の背中側にいる朧を背伸びをして覗き込んだ。
「では改めてご説明致します。私はお兄様の妹同然で育ちましたが、幼い頃からお慕いしておりました。ですから、共に故郷に戻って祝言を挙げる予定でございます」
「お、おいおいこらこら!」
板挟みに遭って一気に頭が痛くなった雪男は、何とかして朧の誤解を解こうと口を開きかけたがーー
「おやおや、面白いことになっていますね」
「か、輝夜!これは…」
「両手に花とはまさにこれですね、兄さん」
「修羅場、とも言えるが」
騒ぎを聞きつけて奥の部屋からやって来た朔と輝夜がなんともいえない表情で雪男を見た。
「ぬ、主さま、これはその…」
「落ち着け。それから話を聞かせろ」
…白兎は雪男の腕に抱きついて嬉しそうにしている。
朧はーーただただ、その羨ましい光景を努めて冷静に見ていた。
門を潜るなり玄関から甲高い女の声が聞こえた。
朧は立ち止まり、雪男は柔和な笑みで近付いてくる声を待ち受ける。
「白兎(しろ)か、大きくなったなあ」
「お兄様…!お会いしたかった!」
見えた人影はーー淡い水色の着物と桃色の帯を身につけ、真っ青な長い髪に真っ青な垂れた目、雪のように白い肌のどこからどう見ても美少女が、雪男の腕の中に飛び込む。
「…っ、お師匠様…」
「ああ、こいつ同郷の子。すげえちっさかったのにちゃんと育つもんだなあ」
「そうですわよ、私、お兄様にお会いしたくて氷麗様にお願いして飛び出して来ましたの!」
「母さんに?なんで?」
…雪男はぼんやりしているが、朧はすぐにぴんときた。
この娘は恋敵。
氷麗が雪男とこの娘を夫婦にさせるために送り込んできたのだろう。
白兎はそこでじっと見つめたまま黙っている朧に気付くと雪男から離れて深々と頭を下げた。
「ご挨拶が遅れまして申し訳ございません。私は白兎と申します。お兄様の許嫁でございます」
「…!」
言葉もなく衝撃を受けている朧を見て慌てた雪男が前に立ち塞がってふたりに早口で説明をした。
「それは俺が故郷を出る前の話だし、反故になってる!こいつは俺の妹みたいなもん!わかったか?」
あまりの慌てように白兎がすっと目を細め、雪男の背中側にいる朧を背伸びをして覗き込んだ。
「では改めてご説明致します。私はお兄様の妹同然で育ちましたが、幼い頃からお慕いしておりました。ですから、共に故郷に戻って祝言を挙げる予定でございます」
「お、おいおいこらこら!」
板挟みに遭って一気に頭が痛くなった雪男は、何とかして朧の誤解を解こうと口を開きかけたがーー
「おやおや、面白いことになっていますね」
「か、輝夜!これは…」
「両手に花とはまさにこれですね、兄さん」
「修羅場、とも言えるが」
騒ぎを聞きつけて奥の部屋からやって来た朔と輝夜がなんともいえない表情で雪男を見た。
「ぬ、主さま、これはその…」
「落ち着け。それから話を聞かせろ」
…白兎は雪男の腕に抱きついて嬉しそうにしている。
朧はーーただただ、その羨ましい光景を努めて冷静に見ていた。

