顔を上げた雪男は、朧が“女”の顔をしているのに満足してぺろりと自身の唇を舐めた。
「まっ、こんなもんか」
「お師匠様…こんなこと…誰にでもしてるんですか…?」
「ははっ、んなわけねえだろ。お前は特別だよ」
ーー特別。
勘違いしたくなるその言葉の力に朧は抵抗しつつもやはり嬉しくて、盃に酒を注いで雪男に待たせた。
「それはありがとうございます。はい、もう一献どうぞ」
ちびちび飲む方ではない雪男が豪快に一気に飲み干すと、喉仏が動いて男らしさをなお強調した。
「…きれい…」
「ん?何が?」
「いえ何でもありません。…そう言えば輝夜兄様が可愛い櫛を下さったんです」
化粧箱に直していた櫛を雪男に見せると、屈託無く笑ってそれを手に取って眺めた。
「輝夜が?へえ、あいつやるじゃん」
隣の朧をよく見ると髪も濡れたまま床に横たえさせたため乱れていて、手の中の櫛に視線を落とした雪男は、朧の肩を叩いて笑った。
「ちょっと背中向けて」
「え、なんですか?」
言われた通り背中を向けるとーー髪を梳いている感触がした。
それはまるで輝夜の予言のような出来事で、耳まで真っ赤になった朧が黙り込んでしまう。
「乾かすまでは気が回らなかった。ごめん」
「い、いえ…」
「…髪、伸びたな。きれいだ」
口説かれているような気分になり、なお言葉に詰まって黙っていると、限りなく優しい手が止まった。
「お師匠様…?」
「跡、消えてたな」
「跡…?……あ…はい…だってもうあれから日が経ってますから…」
「…そうだな」
胸に刻まれた唇の跡。
ふいにあの頃幸せだった時のことを口にした雪男に、洗いざらい告白してしまいたい思いになる。
「またつけてやろうか?」
「…!な、何を言うんですか…冗談はやめて下さい…」
「ん、ごめんごめん。冗談冗談」
朧の艶やかで真っ直ぐな髪を指に絡めて口付けをした。
気付かれないように、そっとそっとーー
「まっ、こんなもんか」
「お師匠様…こんなこと…誰にでもしてるんですか…?」
「ははっ、んなわけねえだろ。お前は特別だよ」
ーー特別。
勘違いしたくなるその言葉の力に朧は抵抗しつつもやはり嬉しくて、盃に酒を注いで雪男に待たせた。
「それはありがとうございます。はい、もう一献どうぞ」
ちびちび飲む方ではない雪男が豪快に一気に飲み干すと、喉仏が動いて男らしさをなお強調した。
「…きれい…」
「ん?何が?」
「いえ何でもありません。…そう言えば輝夜兄様が可愛い櫛を下さったんです」
化粧箱に直していた櫛を雪男に見せると、屈託無く笑ってそれを手に取って眺めた。
「輝夜が?へえ、あいつやるじゃん」
隣の朧をよく見ると髪も濡れたまま床に横たえさせたため乱れていて、手の中の櫛に視線を落とした雪男は、朧の肩を叩いて笑った。
「ちょっと背中向けて」
「え、なんですか?」
言われた通り背中を向けるとーー髪を梳いている感触がした。
それはまるで輝夜の予言のような出来事で、耳まで真っ赤になった朧が黙り込んでしまう。
「乾かすまでは気が回らなかった。ごめん」
「い、いえ…」
「…髪、伸びたな。きれいだ」
口説かれているような気分になり、なお言葉に詰まって黙っていると、限りなく優しい手が止まった。
「お師匠様…?」
「跡、消えてたな」
「跡…?……あ…はい…だってもうあれから日が経ってますから…」
「…そうだな」
胸に刻まれた唇の跡。
ふいにあの頃幸せだった時のことを口にした雪男に、洗いざらい告白してしまいたい思いになる。
「またつけてやろうか?」
「…!な、何を言うんですか…冗談はやめて下さい…」
「ん、ごめんごめん。冗談冗談」
朧の艶やかで真っ直ぐな髪を指に絡めて口付けをした。
気付かれないように、そっとそっとーー

