「朧…」
優しく声をかける者が在る。
少し低いその声は耳に心地良く、まだ目を開けられない朧は喉が渇いていて、掠れた声で訴えた。
「み、ず…」
人の動く気配がした。
頭を少し持ち上げられて口に湯呑みがあたる感触がしたが飲む力がなく、また横になると、何とかうっすら目を開けた。
だが頭が冴えず視界も薄暗いままで、その影がーー覆い被さるようにして唇を重ねてきた。
その口付けの仕方を知っている。
自然と唇が開くと、ゆっくり水が喉に入ってきて、貪るようにして飲み込んだ。
「ん……」
喉が潤って安心した朧がまた意識を失うようにして眠りに落ちる。
ーー雪男は傍に座り直してようやく和らいだ表情になった朧を見つめていた。
「…」
親鳥から餌をもらうようにして口付けをした朧の唇の感触が消えず指で擦るが、消えない。
諦めたはずの想いは再燃して燻り、なお苦しめる。
…いや、諦めなくていいのかもしれない。
朧の手が唇がーーあたたかく感じる間は諦める必要はないのかもしれない。
「…俺さ、お前を離したくない」
眠っている朧に話しかける。
その真っ青な目は優しく和らぎ、息吹にも向けたことがないような愛しさに溢れた眼差しで、朧の頰を手の甲で撫でた。
「だから早く話せよ。どんな話でも…お前を諦めたりしないから」
もう一度…もう一度だけ。
ーー雪男は頰を寄せてもう一度ゆっくり唇を重ねた。
こんなことができる女は雪女以外に朧だけ。
いや、もう雪女にさえすることはない。
「諦めない。離さない。…愛してる」
もう伝えることはないであろうと諦めた告白をした。
「待つことには慣れてる。だから踏ん切りついたら俺に話してくれよな」
また優しく頰を撫でて、目覚めを待った。
優しく声をかける者が在る。
少し低いその声は耳に心地良く、まだ目を開けられない朧は喉が渇いていて、掠れた声で訴えた。
「み、ず…」
人の動く気配がした。
頭を少し持ち上げられて口に湯呑みがあたる感触がしたが飲む力がなく、また横になると、何とかうっすら目を開けた。
だが頭が冴えず視界も薄暗いままで、その影がーー覆い被さるようにして唇を重ねてきた。
その口付けの仕方を知っている。
自然と唇が開くと、ゆっくり水が喉に入ってきて、貪るようにして飲み込んだ。
「ん……」
喉が潤って安心した朧がまた意識を失うようにして眠りに落ちる。
ーー雪男は傍に座り直してようやく和らいだ表情になった朧を見つめていた。
「…」
親鳥から餌をもらうようにして口付けをした朧の唇の感触が消えず指で擦るが、消えない。
諦めたはずの想いは再燃して燻り、なお苦しめる。
…いや、諦めなくていいのかもしれない。
朧の手が唇がーーあたたかく感じる間は諦める必要はないのかもしれない。
「…俺さ、お前を離したくない」
眠っている朧に話しかける。
その真っ青な目は優しく和らぎ、息吹にも向けたことがないような愛しさに溢れた眼差しで、朧の頰を手の甲で撫でた。
「だから早く話せよ。どんな話でも…お前を諦めたりしないから」
もう一度…もう一度だけ。
ーー雪男は頰を寄せてもう一度ゆっくり唇を重ねた。
こんなことができる女は雪女以外に朧だけ。
いや、もう雪女にさえすることはない。
「諦めない。離さない。…愛してる」
もう伝えることはないであろうと諦めた告白をした。
「待つことには慣れてる。だから踏ん切りついたら俺に話してくれよな」
また優しく頰を撫でて、目覚めを待った。

