いつ過呼吸が起きるかも分からないため、雪男は朧の部屋の隅に座って待機していた。
時々黙り込む朧を気遣い、雪男も積極的に声はかけない。
だが視線は絶えず合い、伸びようとする手を抑えつつ、見つめ合う時が流れる。
「…ん、帰って来たな」
朔の気配を察知した雪男が外に出る。
少し体調の戻った朧も床から出てついて行くと、朔と輝夜が揃って庭に降り立ったところだった。
「朧、体調はどうだ?」
「兄様、私は大丈夫です」
「嘘はいけない。怖い夢を見ていますね?」
刀を縁側に置いて襟元を正しながら輝夜が笑むと、朧は悪夢を見ていることを言い当てられて俯く。
「おいで、私が取り除いてあげよう」
「え…?」
「いいからいいから」
手を差し出されてそれを取ると、朧の部屋に上がり込んだ輝夜は朧を床に寝かしつけて、額に手をあてた。
輝夜の掌から何やらあたたかい波動が出ている気がして、朧が目を閉じる。
「こんなものが巣食っていたら夜も眠れないだろう?ほら、身体から力を抜いて」
言われた通りに強張った身体から何とか力を抜くと、朧はあっという間に眠りに落ちる。
「輝夜…ありがとな」
「いえこれくらいはしてあげないとね。あんな夢を見るから君とも満足に話せないんでしょう」
「夢?夢ってどんな…」
輝夜は朧の額にあてていた手を擦り合わせ、目を伏せて笑む。
この不思議な力を数多く持つ輝夜は力のことになると言葉数が減り、ただ微笑むことが多い。
それは昔からのことなので雪男も追求せずに縁側で茶を飲んでいる朔の隣に移動して座った。
「今後どうする?」
「輝夜からの提案で焔を追い込むのは一旦やめる。今は朧の体調を優先したい。それに…」
朔が振り返り、眠る朧の傍で寝顔を見ている輝夜に笑いかけた。
「あれが戻って来るのは本当に珍しいからな。現在過去未来…どこへ行っていたのやら」
「先代に戻って来たこと知らせた方がいいんじゃないか?」
「嫁はまだかとがみがみ言われるだけだから自らは出向かないだろうな。俺も行きたくないし」
背後からよし、と声が上がり、再びふたりが振り返ると、輝夜は朔によく似た笑顔でにこっとした。
「さて雪男、我ら兄弟と一杯やりましょうか」
「えぇ…っ」
うわばみふたりに取り囲まれた雪男は、圧をかけてくる兄弟から逃れられず、悲鳴をあげた。
時々黙り込む朧を気遣い、雪男も積極的に声はかけない。
だが視線は絶えず合い、伸びようとする手を抑えつつ、見つめ合う時が流れる。
「…ん、帰って来たな」
朔の気配を察知した雪男が外に出る。
少し体調の戻った朧も床から出てついて行くと、朔と輝夜が揃って庭に降り立ったところだった。
「朧、体調はどうだ?」
「兄様、私は大丈夫です」
「嘘はいけない。怖い夢を見ていますね?」
刀を縁側に置いて襟元を正しながら輝夜が笑むと、朧は悪夢を見ていることを言い当てられて俯く。
「おいで、私が取り除いてあげよう」
「え…?」
「いいからいいから」
手を差し出されてそれを取ると、朧の部屋に上がり込んだ輝夜は朧を床に寝かしつけて、額に手をあてた。
輝夜の掌から何やらあたたかい波動が出ている気がして、朧が目を閉じる。
「こんなものが巣食っていたら夜も眠れないだろう?ほら、身体から力を抜いて」
言われた通りに強張った身体から何とか力を抜くと、朧はあっという間に眠りに落ちる。
「輝夜…ありがとな」
「いえこれくらいはしてあげないとね。あんな夢を見るから君とも満足に話せないんでしょう」
「夢?夢ってどんな…」
輝夜は朧の額にあてていた手を擦り合わせ、目を伏せて笑む。
この不思議な力を数多く持つ輝夜は力のことになると言葉数が減り、ただ微笑むことが多い。
それは昔からのことなので雪男も追求せずに縁側で茶を飲んでいる朔の隣に移動して座った。
「今後どうする?」
「輝夜からの提案で焔を追い込むのは一旦やめる。今は朧の体調を優先したい。それに…」
朔が振り返り、眠る朧の傍で寝顔を見ている輝夜に笑いかけた。
「あれが戻って来るのは本当に珍しいからな。現在過去未来…どこへ行っていたのやら」
「先代に戻って来たこと知らせた方がいいんじゃないか?」
「嫁はまだかとがみがみ言われるだけだから自らは出向かないだろうな。俺も行きたくないし」
背後からよし、と声が上がり、再びふたりが振り返ると、輝夜は朔によく似た笑顔でにこっとした。
「さて雪男、我ら兄弟と一杯やりましょうか」
「えぇ…っ」
うわばみふたりに取り囲まれた雪男は、圧をかけてくる兄弟から逃れられず、悲鳴をあげた。

