夢現に、とても温かい腕に抱かれていた。
それは耐え難く心地よく、人肌の温もりに溺れて頬ずりをした。
…誰かは分かっている。
物心つく前から大好きだった男の腕だ。
こんなに温かく感じる日が来るだなんてーー
「お目覚めですか」
はっと息を呑み、目を開ける。
目の前にはーーその腕の持ち主は…
「あなたがまた欲しい。昨晩のように愛し合いましょう」
近付いてくる唇…
愛しているあの人の腕ではなく、知ってはいるがさして興味のない男のーー焔の唇が重なりそうになった時ーー
「いやぁ…っ!!」
自分の絶叫で目が覚めた。
恐ろしいことに感触が身体に残っていて、まだ絶叫が止まらない朧を抱きしめたのは…
「朧!大丈夫か?」
「お師匠…様…」
浴衣越しに感じる、よく知っているその腕に心底安心した朧の額には玉のような冷や汗が浮かび、生々しくもあれが現実にあったのではと思うと震えが止まらなくなった。
「嫌な…嫌な夢を見ました…」
「うん…お前さ、少し休めよ。過呼吸が起きて倒れたんだ。晴明も主さまも心配してる」
「お師匠様も…?」
潤んだ目で見つめてくる朧を身体から離してゆっくり頷くと、朧はようやく少し嬉しそうに微笑んだ。
「俺もしばらくは百鬼夜行には出ない。お前が治るまで居るから」
「…飛縁魔との約束があるんじゃ…」
きょとんとした雪男は、そういえばそんなこともあったなと思いつつ朧とは比べものになるわけもなく、笑った。
「ああ、あれは約束つーか仲間だし、百鬼夜行に出れば顔を合わせる程度ってだけだ」
「そう…ですか…。私の傍に?」
「ん」
「…あなたを…裏切ったのに?」
ーー一瞬雪男の頰が緊張して動いたのを朧は見逃さなかった。
「…それとこれとは別の話だろ。とにかく主さまからお前を任されてる。嫌なら…離れてるけど」
「!嫌じゃありません!…もうあんな夢は見たくない…」
「分かった。お前は何も心配しなくていい。主さまがきっといいようにしてくれるからな」
はい、と小さく返事をした。
雪男はーー朧が自ら話してくれるまで待つと決めた。
その小さくか細い手が温かかったから。
それは耐え難く心地よく、人肌の温もりに溺れて頬ずりをした。
…誰かは分かっている。
物心つく前から大好きだった男の腕だ。
こんなに温かく感じる日が来るだなんてーー
「お目覚めですか」
はっと息を呑み、目を開ける。
目の前にはーーその腕の持ち主は…
「あなたがまた欲しい。昨晩のように愛し合いましょう」
近付いてくる唇…
愛しているあの人の腕ではなく、知ってはいるがさして興味のない男のーー焔の唇が重なりそうになった時ーー
「いやぁ…っ!!」
自分の絶叫で目が覚めた。
恐ろしいことに感触が身体に残っていて、まだ絶叫が止まらない朧を抱きしめたのは…
「朧!大丈夫か?」
「お師匠…様…」
浴衣越しに感じる、よく知っているその腕に心底安心した朧の額には玉のような冷や汗が浮かび、生々しくもあれが現実にあったのではと思うと震えが止まらなくなった。
「嫌な…嫌な夢を見ました…」
「うん…お前さ、少し休めよ。過呼吸が起きて倒れたんだ。晴明も主さまも心配してる」
「お師匠様も…?」
潤んだ目で見つめてくる朧を身体から離してゆっくり頷くと、朧はようやく少し嬉しそうに微笑んだ。
「俺もしばらくは百鬼夜行には出ない。お前が治るまで居るから」
「…飛縁魔との約束があるんじゃ…」
きょとんとした雪男は、そういえばそんなこともあったなと思いつつ朧とは比べものになるわけもなく、笑った。
「ああ、あれは約束つーか仲間だし、百鬼夜行に出れば顔を合わせる程度ってだけだ」
「そう…ですか…。私の傍に?」
「ん」
「…あなたを…裏切ったのに?」
ーー一瞬雪男の頰が緊張して動いたのを朧は見逃さなかった。
「…それとこれとは別の話だろ。とにかく主さまからお前を任されてる。嫌なら…離れてるけど」
「!嫌じゃありません!…もうあんな夢は見たくない…」
「分かった。お前は何も心配しなくていい。主さまがきっといいようにしてくれるからな」
はい、と小さく返事をした。
雪男はーー朧が自ら話してくれるまで待つと決めた。
その小さくか細い手が温かかったから。

