「これはまずいことになった」
駆けつけた晴明は朧を診察した後、薬で眠っている朧を見つめながら呟いた。
「お祖父様…朧はどこか悪いのですか?」
「そうだねえ…強いて言うならば、心が」
「心…」
「心因性の発作だよ。…我々妖にとっては死に至る病だ」
朧の青白い顔はそのままに、朔は眉をひそめて繰り返した。
晴明は烏帽子を取り、袖を払ってこそりと囁いた。
「この病に病名をつけるならば、それを恋煩いという」
「ですがお祖父様、それは…」
晴明も事情を知っていた。
なにぶん銀は母の兄で、焔ももちろん身内ーーその焔と何かあったのではと息吹が心配して相談に来たのはつい先日の話だ。
「夫婦にはならぬと聞いているが、心まで騙せぬよ。何か事情があってのことだろう。雪男を想って計り知れぬ愛を抑えようと心と身体が戦っているのだ」
「しかし事情を話さないんです。突然のことで…肝心の焔は雲隠れしていますし」
「しかしこのままではどんどん弱っていくだろう。雪男にも話すべきだよ」
朔は憂いに満ちた目で弱った妹を見つめて細い手を握った。
「…雪男に名を呼ばれて嬉しい、と言っていました。ふたりとも心は離れていません。お祖父様、俺はどうするべきですか?」
「ふふふ、そなたを煩わせるとはねえ。目下大切なのは、朧がしたいことを第一に考えることだ。しばらくは雪男と共に過ごす時を作ってやりなさい。さすれば発作は収まるだろう」
その雪男は、いらいらしながら部屋の外で待っていた。
あんなに苦しそうな顔を見たのははじめてで、半分は人という儚い存在に病はつきものだと忘れかけていた。
「俺は…どうすればいいんだ…」
自分を見るあの目は、何も変わっていない。
愛されているのか、もう愛していないのかーー推し量ることができず、歯を食いしばって揺れるこころと対峙し続けた。
駆けつけた晴明は朧を診察した後、薬で眠っている朧を見つめながら呟いた。
「お祖父様…朧はどこか悪いのですか?」
「そうだねえ…強いて言うならば、心が」
「心…」
「心因性の発作だよ。…我々妖にとっては死に至る病だ」
朧の青白い顔はそのままに、朔は眉をひそめて繰り返した。
晴明は烏帽子を取り、袖を払ってこそりと囁いた。
「この病に病名をつけるならば、それを恋煩いという」
「ですがお祖父様、それは…」
晴明も事情を知っていた。
なにぶん銀は母の兄で、焔ももちろん身内ーーその焔と何かあったのではと息吹が心配して相談に来たのはつい先日の話だ。
「夫婦にはならぬと聞いているが、心まで騙せぬよ。何か事情があってのことだろう。雪男を想って計り知れぬ愛を抑えようと心と身体が戦っているのだ」
「しかし事情を話さないんです。突然のことで…肝心の焔は雲隠れしていますし」
「しかしこのままではどんどん弱っていくだろう。雪男にも話すべきだよ」
朔は憂いに満ちた目で弱った妹を見つめて細い手を握った。
「…雪男に名を呼ばれて嬉しい、と言っていました。ふたりとも心は離れていません。お祖父様、俺はどうするべきですか?」
「ふふふ、そなたを煩わせるとはねえ。目下大切なのは、朧がしたいことを第一に考えることだ。しばらくは雪男と共に過ごす時を作ってやりなさい。さすれば発作は収まるだろう」
その雪男は、いらいらしながら部屋の外で待っていた。
あんなに苦しそうな顔を見たのははじめてで、半分は人という儚い存在に病はつきものだと忘れかけていた。
「俺は…どうすればいいんだ…」
自分を見るあの目は、何も変わっていない。
愛されているのか、もう愛していないのかーー推し量ることができず、歯を食いしばって揺れるこころと対峙し続けた。

