「母さん…朧に変なこと言ったんじゃないだろうな」
「失礼ね、おかしなことは言ってないわよ。当たり前のことをお伝えしただけ」
一本の番傘で、相合傘をしながら先代の住む屋敷へ向かう道中、まだ朧を庇おうとする雪男に対して氷麗が不快そうに鼻に皺を寄せる。
「第一あなたが袖にされたのよ?誰もが手に入れたがっているあなたをよ?この母は許しませんよ」
「…正直今はつらいけどさ、まあこういうの二度目だし。時間が経てば俺も忘れることができるよ。あいつも…朧も屋敷から出て行くんだろうし」
「そうね。半妖同士仲良くすればいいわ」
辛辣な物言いに雪男が苦笑すると、商店街の中を通っていた雪男に娘たちが熱視線を寄せる。
これが普通なのだ。
朔があまりにも美しいので忘れがちだが、雪男と目が合って逸らさない者など居ない。
「母さん、着いたぞ」
先代の張った結界を通り抜けて中へ入る。
すでに話は通っていたため、玄関が開いて先代が姿を現わすと、氷麗は深々と頭を下げた。
「お久しぶりでございます」
「ああよく来たな、入れ」
送り届けた雪男が踵を返そうとした時、先代ーー十六夜は目を細めて呼び止めた。
「お前に話がある。残れ」
「え?あー…いや…ちょっと用事が…」
「口答えするな」
相変わらずな俺様の態度でまた苦笑した雪男は、庭から息吹に手招きされて仕方なくその場に残った。
「雪ちゃん」
「息吹…なんか…ごめんな」
気まずそうに小さく頭を下げた雪男に歩み寄った息吹は、袖の上から雪男の手首を握った。
「謝らなきゃいけないのはこっち。主さ…十六夜さんからその話があると思うから残ってて」
「…もう済んだ話だろ、今さら何を話すって言うんだよ」
自嘲気味に笑う雪男に切ない気持ちになった息吹は背伸びをして顔を近付けた。
「雪ちゃん、お願いだからそんなこと言わないで…」
「…ごめん。俺、なんかおかしくてさ」
「ううん、当然だよ…。だってこんなこと誰も想像できなかったんだから」
息吹に手を引かれた雪男は、丹精に育てられた花に目をやりながら縁側に座って母を待つ。
「失礼ね、おかしなことは言ってないわよ。当たり前のことをお伝えしただけ」
一本の番傘で、相合傘をしながら先代の住む屋敷へ向かう道中、まだ朧を庇おうとする雪男に対して氷麗が不快そうに鼻に皺を寄せる。
「第一あなたが袖にされたのよ?誰もが手に入れたがっているあなたをよ?この母は許しませんよ」
「…正直今はつらいけどさ、まあこういうの二度目だし。時間が経てば俺も忘れることができるよ。あいつも…朧も屋敷から出て行くんだろうし」
「そうね。半妖同士仲良くすればいいわ」
辛辣な物言いに雪男が苦笑すると、商店街の中を通っていた雪男に娘たちが熱視線を寄せる。
これが普通なのだ。
朔があまりにも美しいので忘れがちだが、雪男と目が合って逸らさない者など居ない。
「母さん、着いたぞ」
先代の張った結界を通り抜けて中へ入る。
すでに話は通っていたため、玄関が開いて先代が姿を現わすと、氷麗は深々と頭を下げた。
「お久しぶりでございます」
「ああよく来たな、入れ」
送り届けた雪男が踵を返そうとした時、先代ーー十六夜は目を細めて呼び止めた。
「お前に話がある。残れ」
「え?あー…いや…ちょっと用事が…」
「口答えするな」
相変わらずな俺様の態度でまた苦笑した雪男は、庭から息吹に手招きされて仕方なくその場に残った。
「雪ちゃん」
「息吹…なんか…ごめんな」
気まずそうに小さく頭を下げた雪男に歩み寄った息吹は、袖の上から雪男の手首を握った。
「謝らなきゃいけないのはこっち。主さ…十六夜さんからその話があると思うから残ってて」
「…もう済んだ話だろ、今さら何を話すって言うんだよ」
自嘲気味に笑う雪男に切ない気持ちになった息吹は背伸びをして顔を近付けた。
「雪ちゃん、お願いだからそんなこと言わないで…」
「…ごめん。俺、なんかおかしくてさ」
「ううん、当然だよ…。だってこんなこと誰も想像できなかったんだから」
息吹に手を引かれた雪男は、丹精に育てられた花に目をやりながら縁側に座って母を待つ。

