朔と雪男が庭に降りると、朧がお盆に冷えた緑茶を持ってふたりに差し出した。
「おお、ありがとな」
普段通りにその茶を受け取って一気に飲み干すと、朧は伏し目がちに何度も喉仏が動く様を見ていた。
「父様との面会は明日でいいか?」
「ん、母さんに伝えとくよ」
「あ、あの…お母様、帰られるんですか?」
「ああ、もう用もないしな」
何気なく返したその言葉は、三人にちょっとした緊張を走らせる。
意味を含んだものではなかったが結果おかしな空気になったことに雪男は小さくごめん、と言った。
「しかし今日の大将首は大きかった。何か褒美をやるぞ」
「あ、本当か?じゃあ…俺にしばらく時間くれないか」
縁側に座った朔は、なるべく悟られたくないのか感情を乗せずに願い出た雪男の顔をじっと見上げた。
朧も同じように。
「どうした?」
「何刻かでいいからさ。すぐ帰って来るし」
「…お師匠様、あの…」
「じゃあ俺少し疲れたから寝るよ。ふたりとも早く寝ろよ、銀に見張りするよう言っとくから」
背を向ける。
呼び止めようとした朧は、言葉を被せてきた雪男がこちらの話を聞くつもりがないのだと知ると、泣きそうになってこらえながら俯いた。
「…朧」
「…はい」
「雪男に時間をやってくれ。お前もそうだが、あれも悲壮でつらい。やりきれない」
「私は…どうすれば…」
「普通に話ができるようになるには気持ちの整理が必要なんだ。強気だが実際簡単に割り切れるものじゃない。朧、お前はどうしたいんだい?」
ーー改めて問われると、今後どうしたいのか全く分からない。
離れたくないという気持ちだけは強く、目の前に立っているだけで気が狂いそうなほど恋しいのにーー
「分かりません…」
「そうだね…俺も分からない」
兄妹は同じようにため息をついて雪男が去って行った方を見つめた。
「おお、ありがとな」
普段通りにその茶を受け取って一気に飲み干すと、朧は伏し目がちに何度も喉仏が動く様を見ていた。
「父様との面会は明日でいいか?」
「ん、母さんに伝えとくよ」
「あ、あの…お母様、帰られるんですか?」
「ああ、もう用もないしな」
何気なく返したその言葉は、三人にちょっとした緊張を走らせる。
意味を含んだものではなかったが結果おかしな空気になったことに雪男は小さくごめん、と言った。
「しかし今日の大将首は大きかった。何か褒美をやるぞ」
「あ、本当か?じゃあ…俺にしばらく時間くれないか」
縁側に座った朔は、なるべく悟られたくないのか感情を乗せずに願い出た雪男の顔をじっと見上げた。
朧も同じように。
「どうした?」
「何刻かでいいからさ。すぐ帰って来るし」
「…お師匠様、あの…」
「じゃあ俺少し疲れたから寝るよ。ふたりとも早く寝ろよ、銀に見張りするよう言っとくから」
背を向ける。
呼び止めようとした朧は、言葉を被せてきた雪男がこちらの話を聞くつもりがないのだと知ると、泣きそうになってこらえながら俯いた。
「…朧」
「…はい」
「雪男に時間をやってくれ。お前もそうだが、あれも悲壮でつらい。やりきれない」
「私は…どうすれば…」
「普通に話ができるようになるには気持ちの整理が必要なんだ。強気だが実際簡単に割り切れるものじゃない。朧、お前はどうしたいんだい?」
ーー改めて問われると、今後どうしたいのか全く分からない。
離れたくないという気持ちだけは強く、目の前に立っているだけで気が狂いそうなほど恋しいのにーー
「分かりません…」
「そうだね…俺も分からない」
兄妹は同じようにため息をついて雪男が去って行った方を見つめた。

