「…だから人は裏切る、と言ったでしょう」
分かる範囲で母の氷麗に説明した雪男は、力なく氷麗の隣に座ってうなだれた。
「…そうなのかな」
「あなたは間違っていたのよ氷雨。そして…朧様は男を見る目がなかったということね。あなたのように強くて美しい同族は居ないのに」
雪男は儚く微笑み、目を閉じる。
「朧が何も話さないんだ。会ってもくれないし…ただ、何でか焔は受け入れられてる。…そういうことなのか?」
「あの半妖ね?氷雨…諦めなさい。あなたには不釣り合いだし、あなたを求めている女は大勢居るわ。一緒に故郷に戻りましょう」
「…いや、俺は主さまの傍に居る。じっとしてると考えてしまうから百鬼夜行に出て動いてた方が気楽だ」
親子そう会話をしている頃、朔はようやく朧と会うことができた。
…目は真っ赤に腫れ、事切れた人形のように顔を上げず部屋の隅に座っている妹を見て、朔は眼前で膝を折って傷だらけの手を包み込む。
「朧…手当をしよう。おいで」
「…兄様…」
「うん。ここに居るよ」
「…お師匠、様は…」
「…破談の話は伝えておいた。…時間をかければ分かってくれるよ」
「兄様…訳を…聞かないんですか…?」
「想像し得ないことが起きたのは分かる。ただ…お前を傷つけてまで無理には聞かない。雪男もいい大人なんだ、お前に会っても問い詰めたりはしないだろう。だから一度部屋から出なさい。いいね?」
数分待った後朧が頷くと、朔は手を引いて立ち上がらせようとしたが、脚が萎えているのか力が入らず、抱きかかえた。
「母様、湯の用意を」
「朧ちゃんおいで、母様と入りましょう」
家族の温かさにまた涙が零れ、胸に顔を埋める朧を風呂場まで連れて行った後どうしたものかと考えていると、階段から雪男が上がって来た。
「朧が部屋から出た。今は風呂だ」
「…ああ、うん」
「顔を合わせても追求はしないでくれ」
「…しねえよそんなの」
ーー雪男の表情は冷たく、朔の胸に不安が飛来する。
漠然とした不安だったが、この後雪男の下した決断に騒然とすることになる。
分かる範囲で母の氷麗に説明した雪男は、力なく氷麗の隣に座ってうなだれた。
「…そうなのかな」
「あなたは間違っていたのよ氷雨。そして…朧様は男を見る目がなかったということね。あなたのように強くて美しい同族は居ないのに」
雪男は儚く微笑み、目を閉じる。
「朧が何も話さないんだ。会ってもくれないし…ただ、何でか焔は受け入れられてる。…そういうことなのか?」
「あの半妖ね?氷雨…諦めなさい。あなたには不釣り合いだし、あなたを求めている女は大勢居るわ。一緒に故郷に戻りましょう」
「…いや、俺は主さまの傍に居る。じっとしてると考えてしまうから百鬼夜行に出て動いてた方が気楽だ」
親子そう会話をしている頃、朔はようやく朧と会うことができた。
…目は真っ赤に腫れ、事切れた人形のように顔を上げず部屋の隅に座っている妹を見て、朔は眼前で膝を折って傷だらけの手を包み込む。
「朧…手当をしよう。おいで」
「…兄様…」
「うん。ここに居るよ」
「…お師匠、様は…」
「…破談の話は伝えておいた。…時間をかければ分かってくれるよ」
「兄様…訳を…聞かないんですか…?」
「想像し得ないことが起きたのは分かる。ただ…お前を傷つけてまで無理には聞かない。雪男もいい大人なんだ、お前に会っても問い詰めたりはしないだろう。だから一度部屋から出なさい。いいね?」
数分待った後朧が頷くと、朔は手を引いて立ち上がらせようとしたが、脚が萎えているのか力が入らず、抱きかかえた。
「母様、湯の用意を」
「朧ちゃんおいで、母様と入りましょう」
家族の温かさにまた涙が零れ、胸に顔を埋める朧を風呂場まで連れて行った後どうしたものかと考えていると、階段から雪男が上がって来た。
「朧が部屋から出た。今は風呂だ」
「…ああ、うん」
「顔を合わせても追求はしないでくれ」
「…しねえよそんなの」
ーー雪男の表情は冷たく、朔の胸に不安が飛来する。
漠然とした不安だったが、この後雪男の下した決断に騒然とすることになる。

