主さまの気まぐれ-百鬼夜行の王-【短編集】※次作鋭意考案中※

「え…祝言はなしって…どういう…」


混乱を極めている中、さらに雪男は混乱を覚えてよろめいた。

どんな状況においても百鬼夜行は行われるので、翌朝朔が戻ってきたときにもたらされたその話は、衝撃の何物でもなかった。


「昨晩、母様が本人から聞いたそうだ。雪男…」

「いや…意味わかんねえよ…なんでそんな急に…」


「雪男」


「俺が何かしたのか?でも何も思い当たらないし、いやほんと意味が…」


「氷雨」


朔から両手で顔を挟まれた雪男は、そこでようやく朔と目が合った。

傍に控えていた息吹は俯いたまま顔を上げず、朔だけが気丈に雪男に説明を続けた。


「現段階ではわからないことの方が多い。だが朧が憔悴しきっているから無理に聞き出すのは避けたい。氷雨、まだ諦めるな。朧はまだお前を好いている」


「……分かった」


生を受けてから幾星霜ーー大人の雪男は余裕がない中でも聞き分けることができた。

ただ自分が悪いのなら謝りたいし、違うのなら理由を聞きたいーー


愛しているから傍に居たいのに。


「雪ちゃん…」


「俺…ちょっと母さんのとこに行ってくる」


まだ滞在している氷麗は雪男の部屋で過ごしていることが多く、雪男は白い顔になんとか笑顔を作りながら、その場から去る。

朔と息吹は手を取り合い、朧と雪男を想う。

その間には焔が関わっているのは確かで、側近の不遇に何としても立ち向かうつもりの朔は、庭をうろついていた銀に声をかけた。


「焔を呼べ。話がある」