朧も焔も夜目が効くため、特に灯りは必要ない。
…朧の化粧は崩れ、一向に乾かない涙は止めどなく流れ続けていた。
「…朧様…」
「…」
部屋の隅でうつむき、長い髪が表情を隠して見えないがーー明らかに泣いている。
刺激しないようそっと近づいてある程度の距離なところで座った焔は、しばらく黙った後、口を開いた。
「外に雪男が居ましたよ」
「…」
「もしや…あなたと雪男は恋仲にあったのでは?」
「……」
「…ではわたしは間男というわけか。滑稽な…」
自嘲気味に笑った焔の方をようやく見た朧は、真っ赤な目でひたと見据えて確認をした。
「私が…私が誘ったんですよね…?」
「…ええ」
「…ごめんなさい…間違いでした…。私には…好きな方が…」
「雪男…ですよね?正直に話された方が」
「駄目!…やめて下さい…」
「しかしこのままでは…破談になってもよろしいのですか?」
ーー破談。
その言葉の響きに胸をかきむしるような思いになった朧は、唇を嫌というほど噛み締めて出血すると、母からの言いつけを思い出した。
『心も体も許すのは、たったひとり愛した方にだけ。朧ちゃん、それだけは守ってね』
すでにその言いつけは破られた。
雪男に正直に話す勇気もなければ、こんな…こんな汚れた身体で嫁に行けるわけもない。
「私…」
口にしたくはない。
けれど、あんなに美しくて真っさらな人のもとに、汚れた自分が嫁げるわけもない。
「私…雪男とは…お別れします…」
自分自身を諦めた。
…朧の化粧は崩れ、一向に乾かない涙は止めどなく流れ続けていた。
「…朧様…」
「…」
部屋の隅でうつむき、長い髪が表情を隠して見えないがーー明らかに泣いている。
刺激しないようそっと近づいてある程度の距離なところで座った焔は、しばらく黙った後、口を開いた。
「外に雪男が居ましたよ」
「…」
「もしや…あなたと雪男は恋仲にあったのでは?」
「……」
「…ではわたしは間男というわけか。滑稽な…」
自嘲気味に笑った焔の方をようやく見た朧は、真っ赤な目でひたと見据えて確認をした。
「私が…私が誘ったんですよね…?」
「…ええ」
「…ごめんなさい…間違いでした…。私には…好きな方が…」
「雪男…ですよね?正直に話された方が」
「駄目!…やめて下さい…」
「しかしこのままでは…破談になってもよろしいのですか?」
ーー破談。
その言葉の響きに胸をかきむしるような思いになった朧は、唇を嫌というほど噛み締めて出血すると、母からの言いつけを思い出した。
『心も体も許すのは、たったひとり愛した方にだけ。朧ちゃん、それだけは守ってね』
すでにその言いつけは破られた。
雪男に正直に話す勇気もなければ、こんな…こんな汚れた身体で嫁に行けるわけもない。
「私…」
口にしたくはない。
けれど、あんなに美しくて真っさらな人のもとに、汚れた自分が嫁げるわけもない。
「私…雪男とは…お別れします…」
自分自身を諦めた。

