丹念に化粧をした。
おかしくないか何度も確認して、いつの間にか熱中しすぎて夜も更けていた。
「朧様、よろしいでしょうか」
「あ…焔さん?どうぞ」
焔が留守役の時は比較的一緒に談笑して過ごしていたので、何の躊躇もなく朧が襖を上げて中へ招き入れる。
いつも以上に美しくなっている朧を見下ろした焔は、ふっと微笑んで身体を朧に傾けた。
「お綺麗にしてらっしゃる。何かあったのですか?」
「え?あ、はい…ちょっと嬉しいことがあって…」
まだ訳は言えない。
はにかむ朧の鼻先に隠し持っていた徳利を差し出した焔は、珍しく人好きのする笑顔を浮かべて徳利を揺らした。
「そうではないかと思っていました。これは白狐の間で話題の銘酒です。理由は知りませんがお祝い致しましょう」
酒からほのかに花の香りがする。
くんと鼻を鳴らした朧は、一緒に喜んでくれている焔に最上の笑みを返すと、とすんと座って頭を下げた。
「ありがとうございます。少し頂きます」
懐からふたつの盃を出した焔はひとつを朧に手渡して注ぐ。
少し浮かれていた朧ははじめて酒を飲んだにも関わらず一気に飲み切り、焔を笑わせた。
「おお、飲みっぷりがよい」
「わあ…美味しい!はじめてお酒を飲みました」
「そうですか。では話でもしながら晩酌させて頂きましょう」
ーー焔は飲ませるのがうまく、盃が空になると多くない程度に注いで楽しい話を聞かせた。
…その酒は確かに喉越しは良かったが…思っている以上に強い。
だんだん目がとろんとしてきた朧の手を焔が柔らかく取る。
「…私はここに居たい。百鬼として認められたい。主さまに…あなたに」
「んん………お師匠、様…」
朧の口から出たのは雪男で、焔の金の目がすうっと細くなった。
「私は…あなたを…愛して…いま、す…お師匠様…」
「……」
しなだれかかってきた細く軽い身体を受け止める。
そうして、最悪の夜はやって来た。
おかしくないか何度も確認して、いつの間にか熱中しすぎて夜も更けていた。
「朧様、よろしいでしょうか」
「あ…焔さん?どうぞ」
焔が留守役の時は比較的一緒に談笑して過ごしていたので、何の躊躇もなく朧が襖を上げて中へ招き入れる。
いつも以上に美しくなっている朧を見下ろした焔は、ふっと微笑んで身体を朧に傾けた。
「お綺麗にしてらっしゃる。何かあったのですか?」
「え?あ、はい…ちょっと嬉しいことがあって…」
まだ訳は言えない。
はにかむ朧の鼻先に隠し持っていた徳利を差し出した焔は、珍しく人好きのする笑顔を浮かべて徳利を揺らした。
「そうではないかと思っていました。これは白狐の間で話題の銘酒です。理由は知りませんがお祝い致しましょう」
酒からほのかに花の香りがする。
くんと鼻を鳴らした朧は、一緒に喜んでくれている焔に最上の笑みを返すと、とすんと座って頭を下げた。
「ありがとうございます。少し頂きます」
懐からふたつの盃を出した焔はひとつを朧に手渡して注ぐ。
少し浮かれていた朧ははじめて酒を飲んだにも関わらず一気に飲み切り、焔を笑わせた。
「おお、飲みっぷりがよい」
「わあ…美味しい!はじめてお酒を飲みました」
「そうですか。では話でもしながら晩酌させて頂きましょう」
ーー焔は飲ませるのがうまく、盃が空になると多くない程度に注いで楽しい話を聞かせた。
…その酒は確かに喉越しは良かったが…思っている以上に強い。
だんだん目がとろんとしてきた朧の手を焔が柔らかく取る。
「…私はここに居たい。百鬼として認められたい。主さまに…あなたに」
「んん………お師匠、様…」
朧の口から出たのは雪男で、焔の金の目がすうっと細くなった。
「私は…あなたを…愛して…いま、す…お師匠様…」
「……」
しなだれかかってきた細く軽い身体を受け止める。
そうして、最悪の夜はやって来た。

