こっそり屋敷へ戻り、悟られないように一緒の時間を減らすため朝まで自室に籠もった。
そして百鬼夜行から朔が戻って来るとそれを雪男が出迎えたのを確認して風呂へ向かう。
ーー幸せなひと時だった。
思い出すだけで嬉しくてあまり眠れないほどに。
「私…早くお嫁さんになりたいな…」
父が首を縦に振るのはいつなのだろうか?
いっそのこと実家に乗り込んで父を説得してみようか?
もやもやしながら湯船に浸かって温めた後、きれいに身体を拭いて部屋に戻ると着替えるために鏡台の前で浴衣を脱いだーーが…
「え…っ、これって…」
胸元に朱の痕。
虫に刺されたのかと一瞬気楽に思ったが…
それは雪男がつけた唇の痕だ。
所有印を身体に刻まれて全身熱くなると、手早く着替えて足音も高く縁側を歩いて庭を掃いている雪男を見つけて裸足で降りた。
「ん?どうし…た?」
「あんなの…あんなのつけるなんてっ」
「は?」
きょとんとしている雪男に朧は桃色の着物の上から胸元をとんと叩いた。
「ここの…」
「…ああそれか…。見えないとこにつけたからいいじゃん」
「はっ、恥ずかしいじゃないですか…」
「消えたらまたつけてやるよ。それ位いいだろ?」
腰に手をあてて小首を傾げる雪男が可愛らしく、言葉に詰まった朧は蚊の鳴くような声で呟いた。
「じゃあ…私にもつけさせて下さい」
「はっ?いや、それは…」
「見えないとこにつけますから。約束ですからね!」
言い逃げするかのように脱兎の如く雪男から逃げた朧は、途中朔に出くわして息が止まる。
「何が見えないとこだって?」
「い、いえ、何でもありませんっ。失礼します!」
朔はぽかんとすると、庭で口元を隠して赤面している雪男を見てふっと笑った。
「そろそろ限界か。仕方ないな」
妹の幸せのために、動く。
そして百鬼夜行から朔が戻って来るとそれを雪男が出迎えたのを確認して風呂へ向かう。
ーー幸せなひと時だった。
思い出すだけで嬉しくてあまり眠れないほどに。
「私…早くお嫁さんになりたいな…」
父が首を縦に振るのはいつなのだろうか?
いっそのこと実家に乗り込んで父を説得してみようか?
もやもやしながら湯船に浸かって温めた後、きれいに身体を拭いて部屋に戻ると着替えるために鏡台の前で浴衣を脱いだーーが…
「え…っ、これって…」
胸元に朱の痕。
虫に刺されたのかと一瞬気楽に思ったが…
それは雪男がつけた唇の痕だ。
所有印を身体に刻まれて全身熱くなると、手早く着替えて足音も高く縁側を歩いて庭を掃いている雪男を見つけて裸足で降りた。
「ん?どうし…た?」
「あんなの…あんなのつけるなんてっ」
「は?」
きょとんとしている雪男に朧は桃色の着物の上から胸元をとんと叩いた。
「ここの…」
「…ああそれか…。見えないとこにつけたからいいじゃん」
「はっ、恥ずかしいじゃないですか…」
「消えたらまたつけてやるよ。それ位いいだろ?」
腰に手をあてて小首を傾げる雪男が可愛らしく、言葉に詰まった朧は蚊の鳴くような声で呟いた。
「じゃあ…私にもつけさせて下さい」
「はっ?いや、それは…」
「見えないとこにつけますから。約束ですからね!」
言い逃げするかのように脱兎の如く雪男から逃げた朧は、途中朔に出くわして息が止まる。
「何が見えないとこだって?」
「い、いえ、何でもありませんっ。失礼します!」
朔はぽかんとすると、庭で口元を隠して赤面している雪男を見てふっと笑った。
「そろそろ限界か。仕方ないな」
妹の幸せのために、動く。

